本書のプロローグの冒頭に「この本は実存主義や構造主義の解説書ではない.また,文学作品についての評論や批評,あるいは入門書の類でもない.」と書かれていますが,本書は実存主義や構造主義のバリバリの解説書であり,文学作品の評論でもあります.
難しい言葉や概念をほとんど使わず,丁寧にわかりやすく実存主義と構造主義の解説がなされています.
なので,初心者でも読了するのにさほど困難を感じないでしょう.
特に,構造主義的内容を含む,大江健三郎と中上健次の小説を,結構な頁数を割いて詳しく論じているので,その手の批評を読みたい方にはお薦めです.
ただし,同著者による「深くておいしい小説の書き方」(集英社文庫)に書かれている内容と本書の内容に似通った部分が多くて(それでも,内容が完全に一緒というわけではなく,修正されてはいるのですが),「深くて・・・」を読んだことがある方には,若干デジャブ感を与えかねないと思います.
しかし,本書の方がライトに書かれているので,実存主義と構造主義とはなんぞや,ということを入門的にお手軽に学びたい方にはお薦めかもしれません.