本屋に行くと一番目立つコーナーに何種類もの直江兼続本が積まれている。大抵は写真やカラー・イラストをふんだんに載せていて、細切れの時間にパッと見るには非常に良く出来た出版物だと言える。
こうしたものに比較すると、この文庫本には、モノクロ写真が若干挿入されているものの、上記の本のような華やかさはない。しかし直江兼続に関わった作家比べという点では、非常に面白い本である。NHK大河ドラマの「天地人」の原作者の火坂雅志他、坂口安吾、童門冬二、海音寺潮五郎などのおなじみの作家だけでなく、中堅・若手の作家群がそれぞれ直江兼続について個性豊かに書き、語っている。各作家の兼続観、文体、語り口等を比べながらじっくり味わえる本になっている。
同書の内容の大半は、各作家がこれまでバラバラに発表してきたものを寄せ集めたものである。言ってみれば、癖が強く味の濃い単品料理を並べたようなものだ。恐らくシンガリに小笠原宏樹の「直江兼続の生涯」を置いたのは、栄養バランスを取るためなのだろう。食事の後にミルクを一杯といったところだろうが、このミルクがまた特産品か何かで、かなりの長文で情報量が非常に多いのにもかかわらず良く書けていて読み飽きない。歴史学者では書けないと思う。さすがに作家である。
NHKが総力をあげて作る大河ドラマは良く出来ていて視聴率も高いらしいが、この文庫本を読めば一層興味深く見れると思う。かなりのお勧めである。