著者の作品はどれも、何も考えずに楽しめればそれでよし!的で、食べ歩きと全国の古本蒐集が好きなサラリーマン(実際サラリーマンなのだが)の無邪気なブログをまとめたという印象しか残らないので、一読したときにはいつも物足りなさが残ってしまう。
でも、とにかく気楽に読めるので、就寝前の睡眠導入剤?としてけっこう愛読していたりもする。どの作品もものすごくおもしろいということはないけど、なんとなく繰り返し読んでしまう。定食と定食的なものを愛して止まない著者の作品自体がすでに定食的であり、自分がその味に馴らされてしまったようだ。
だから投稿したレビューの評価も、最初に読んだ二冊(「定食バンザイ(ちくま文庫)」「がんがん焼肉もりもりホルモン(ちくま文庫)」)が普通(☆3)だったのに、三冊目となった「定食学入門(ちくま新書)」ではそれよりちょい上(☆4)の評価になっていた。
で、そんな著者が書いたこの作品、どんな作品かといえば、“はじめに”にはこう書かれている。
「(前略)文学作品(プラスα)に描かれた定食および定食的メニューを作品とともに紹介し、さらに作品にちなんだ定食を私が実際に食べに行った記録である。」
非常に正確な文章だ。ついでに書くと「文学と定食」ではなく「定食と文学」というタイトルも正確だ。少し補足するとすれば、定食よりも定食的メニューの方が多いということ、作家が「通った」ではなく、「ちなんだ(その精神を体現した)」店がほとんどだということくらいである。
この作品はこれ以上でもこれ以下でもない。
だから、タイトルにつられ、新たな文学論などを期待して本書を手に取ってしまうと果てしなく後悔することになると思う。
普通のエッセイとして読んでもいつものとおりまあまあおもしろい。そして、いつものとおり物足りない。でも、このまあまあ感と物足りなさに心地良さすら感じてしまう。
そして、この本も著者の他の作品と同じく愛読書になるような気がするのは、結局のところ、自分が著者の作品に深い考察などではなく無邪気さを求めているからなのだと思うに至った。