シンプルだがユニークで説得力のある冒頭の理論編、これを応用した日本近代文学史、構成論における「展開」「形式」など、何処を取っても面白い議論で溢れている。世界にも類が無い独創的な文学理論。しかし、文学体と話体の概念の登場は、やや唐突で、やや不親切な趣がある。理解できないわけではないが、指示表出、自己表出などのそれまでの理論の延長線として自ずと理解できるようになっているとは思えない。論文ではないからとはいえ、やはり少しくどくてもきちんと説明をしてから、応用編に進むべきだった。三浦つとむ「日本語はどういう言語か」を読んでから読むと分かりやすい。三浦の圧倒的な影響下にあったことが分かる。また、この理論は使える理論であって、批評のツールとしてもっと利用されてもよいと思う。だが、この理論だけでは、やはり「小説」には迫れない部分が残ると思う。だが、諸概念の展開という本論とは別に、「近代文学史」の諸作家の評価や「構成論」で展開される「近松」論は、それだけで魅力的な読み物で、改めて、それら著作に読者を向かわせるだけのおもしろさがある。多面的な面白さを持った「詩学」としても異例だと思う。