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定本 柄谷行人集〈3〉トランスクリティーク―カントとマルクス
 
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定本 柄谷行人集〈3〉トランスクリティーク―カントとマルクス [単行本]

柄谷 行人
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

カントによってマルクスを読み,マルクスによってカントを読む―社会主義の倫理的根源を明らかにし,来るべき社会にむけての実践を構想する本書は,絶えざる「移動」による視差の獲得とそこからなされる批判作業(トランス=クリティーク)の見事な実践である.昨年出版された英語版に基づいて本文を改訂.

登録情報

  • 単行本: 464ページ
  • 出版社: 岩波書店 (2004/3/26)
  • ISBN-10: 4000264885
  • ISBN-13: 978-4000264884
  • 発売日: 2004/3/26
  • 商品の寸法: 19.2 x 13.6 x 4.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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22 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
資本主義経済と国民国家がガンであるという意見を、真正面から否定することは困難である。地球規模での環境破壊と、増大する紛争の惨劇は、人に思考を強い続けてきたが、資本の運動の原理と国家の原理を批判することなく前進することは不可能になってきている。

一方で、この両者はあまりにも強力であるから、真正面から断罪することも困難である。これらを凌駕する政治経済原理を構想することができないのである。
しかし、驚くべきことであるが、この本にはその構想が述べられているのだ。

資本主義経済がガンであることは、その原動力が、形而上的欲動であると突き詰めることにより明かにされている。(第二部第2章の3,4)また何故エンドレスに生き延びるのかということも、理論的に解明されている。(同第3章)しかし、この本の真の力は、「価値形態論」により導き出された、貨幣による交換が生み出す非対称な関係に、これらすべてが基いているという洞察を瞬時も手放さない点にあるのだ。この関係は自己増殖する資本の運動を可能にすると同時に、「対抗ガン」の可能性も同等に保証しているのである。

さらに、この本の傑出したところをもう一点述べる。それは、国民国家の原理が、すなわちその力の源泉が、収奪と再配分という交換原理からとらえられている点だ。資本主義経済と同様、強力ではあるが、寄生的であることは明瞭なのだ。現代の危機は、これら2つの原理が補足的に、増幅しながら作用する点にあるのだが、インターナショナルではなく、カントの自由の原理に基くトランスナショナルな対抗運動のみが、上記の「対抗ガン」と融合することによって、この複合体を解体し新たな交換原理(アソシエーション)に組替えていくことができる、とこの本は理論的に示し得ている。

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34 人中、23人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
本書は、柄谷行人集全5巻の中で、もっとも重要な本です。これまで曖昧だったり混乱していた問題を整理し、そのいくつかには解答まで提示しています。これは天才の仕事です。ただし、理論書として。

資本主義社会がなぜ揚棄されなければならないか、その理由を、本書は丁寧すぎるぐらいに説明しています。ーーでも、NAMは駄目だったじゃないか、と言う人には、次の点だけ確認させていただきます。つまり、柄谷氏は、繰り返し(本書以外でも)以下のマルクスの言葉を引用していました。
「共産主義とは、われわれにとって成就されるべきなんらかの状態、現実がそれに向けて形成されるべきなんらかの理想ではない。われわれは、現状を揚棄する現実の運動を、共産主義と名づけている。この運動の諸条件は、いま現にある前提から生ずる」(「ドイツ・イデオロギー」)

他方、NAMがまるでなかったかのように本書を評価している人には、NAMと切り離して本書を読めるのですか、と質問したい。NAMに限界があったのなら、本書からも限界を読み取るべきだと思います。
「ガンジーを知らずに、彼のやったことを実行しようとしたのは、晩年のマルコムXである。彼は、黒人による生産-消費協同組合を組織しようとした。それは暗黙に資本制経済に対するボイコット運動なのである。そして、おそらくはその結果として彼は殺された」(p513)
本当にそうであるなら、現在柄谷氏やNAMが放任されているのは、単にまだ氏やNAMが資本=ネーション=ステートに対して大きな脅威になっていないから、と考えるべきだと思います。柄谷氏の理論的な強さに比して、(私のような不勉強者が言うのは大変失礼ですが)実際面での認識には不充分な面もあるのでは、と感じられます。
このレビューは参考になりましたか?
By JRX
形式:単行本
ずっと「積ん読」状態で手つかずだった柄谷行人氏の「トランスクリティーク」(2001年)を氏の近著「世界史の構造」(2010年)を読んだ目で読み返しました。

この「トランスクリティーク」で深く掘り下げられたカントについての考察があって、はじめて「世界史の構造」(およびその抄論としての「世界共和国へ」)が成立し得たのだということに思い至りました。そしてこれらの著作を同時代にリアルタイムで読むことの意味を感じました。

今回「トランスクリティーク」を読んで、最も大事なポイントだと思ったことを今日ここに書きます。

それは「単独性」の視点についてです。

それは「類」に属するような「個」を置いたうえで、それらをつなぐ関係性を考察するというような思考に対する批判であり、次のような、ものの捉え方に対する批判としてあらわれる倫理のベクトルのようなものと言えます。

『この一枚の紙と言うとき、すべての紙、どの紙も一枚の紙なのである。私は相変わらずただ一般的なものを語っているだけである。(ヘーゲル「精神現象学」)』

「単独性」の視点とは、言語で定義しようとしてもその外部にこぼれ出てしまうような、あるいは、たとえ固有名をつけたとしても、そうした名称でつなぎとめることができないような、「或る一人の人物」であったり、「或る一匹の犬」であったりするもの、すなわち代替や再現が不可能なものを見据えた上で、それを大切に扱う視点です。

音楽に関係する者同士であれば、空を舞って瞬く間に消えてゆく自分の発した実音を大事に思う気持ちのようなものと言えば、わかっていただけるかもしれません。

こうした、ある意味でミクロな「単独性」の視点が、ひるがえって「普遍性」あるいは「他者」「外部」といった論理につながります。このような「単独性…普遍性」への視点が無ければ「すべての人の同意を要求する(カント)」ような普遍性を探求する精神も生じ得ないと思います。

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今日ここに書いていることは、一年前(2011年3月11日)に起きた災害に結びつけたくないと感じています。

しかし同時に次のことが言えると思います。

「単独性」の視点が無ければ、亡くなられた方、傷ついた方、大切なものを喪失された方をいたわる心は持ち得ない。そして、まだこの世に生まれていない未来の人たち、あるいは大昔からこの地で生活を育んでこられた先人の方たちに対する「取り返しのつかないことをした」という気持ちは起こり得ないと。

:::::

柄谷氏が「トランスクリティーク」を執筆しはじめた90年代初頭から数えて20年以上の長きにわたる、倫理的要請に立脚した考察は、以下の一節に凝縮されていると思います。

『他者を「目的として扱う」とは、他者を自由な存在として扱うということであり、それは他者の尊厳、すなわち、代替しえない単独性を認めることである。自分が自由な存在であることが、他者を手段にしてしまうことであってはならない。すなわち、カントが普遍的な道徳法則として見出したのは、まさに自由の相互性(互酬性)なのである。』(「世界史の構造」345頁)
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