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この本を貫く洞察、「日本近代文学」の起源には政治的闘争の挫折があるという洞察が、20年間を経てまるで違って見えてきたのだ。60年代~70年代にあった政治的闘争の挫折から文芸批評を始めた著者には、この洞察は徹底的な自己批判でもあった筈だ。早い時期に著者は徹底的なマルクスの読解に挑み、画期的な成果を上げていた。しかし、政治的闘争に立ちかえることは決してなかった。単なる政治闘争では歯が立たないことを知悉していたからである。と同時に、長年にわたる批評活動によって「日本近代文学」の営為のすべてが「近代の超克」に収斂することも確信していた。著者によってこの超克すべき近代が「資本―ネーション―ステート」であると初めて明確に捕らえられたのであるが、この認識によって、ほぼ30年に一度反復されてきた「政治的闘争の挫折」がまるで違って見えてきたのだ。
今後闘争は文学的な闘争でも政治的な闘争でもないことは明かである。おのおのの持ち場で、倫理的―経済的闘争はすでに開始されている。「定本 柄谷行人集」全5巻の成果はこの闘争の指針であり続ける。
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