無声映画時代から晩年に至るまでのヒッチコック名作群(と少々の失敗作)を論題にして、二人の巨匠が「映画術」について熱く語り合っています。
「ヌーヴェルバーグの旗手」トリュフォーによる「サスペンスの神様」ヒッチコックへのインタビューという設定だけで、多くの映画ファンは興味を惹きつけられるでしょう。その期待に違わず、内容も最上。撮影テクニック、俳優の在り方、観客との駆け引き等、対談は映画の隅々に及び最後まで飽きさせません。ヒッチコックの映像への徹底的なこだわりと、彼の映像哲学をここまで深く引き出したトリュフォーの映画への情熱にただただ感服します。本の大きさに怯んでしまうかもしれませんが、マニアックな表現も多くないので、映画マニアでなくとも映画好きなら一気に読めるでしょう。
「ヒッチコックなんて過去の人」と決め付けるのは早計です。確かにCGを見慣れた現代の映画ファンからすれば、当時斬新だった特殊技術も陳腐に感じるでしょう。が、観客の「心理」というものは今も昔も変わりません。恐怖とジョークを絶妙にブレンドして、観客を映像世界へ引き込んでいく表現技法は、今なお鮮烈。彼の代表作のひとつである「汚名」などは現代の映画と比べても遜色なく面白い。本書と併せて、デビット・フィンチャーなどの作品を観れば、この巨匠が後世の映像作家たちにいかに多大な影響を与えているのかはっきりとわかるでしょう。
例えヒッチコックファンでなくとも、映画好きの方には是非お薦めしたい一冊です。