伊能忠敬は家業を50歳で引退し、52歳で20歳近くも年下の高橋至時に師事し、大日本沿海輿地全図完成という偉業を成し遂げた、いわゆる「定年後の人」である。忠敬のように、定年後20年、30年と続く第3の人生こそ、仕事に追われてできなかったことに専念しよう。そして、せっかくなら一流になろうと、著者は説く。
学問を究めるには、専攻する分野の「トップの仕事」を徹底研究し、最低5人の仮想敵を作り、誰にも負けない有力分野を作ることが必要だ。この方法で、1日8時間の研究活動を続ければ、3年で並の学者は追い越せるはずだと著者は言う。既存のモデルがあるのだから、先発組に追いつくのは簡単だ。市場でも後発の中国が完全に日本を追い上げている。学問の場面で同じことができないわけがない、と。
一流の学者になる4つの方法が詳しく説明される中で一番のおすすめは、今の仕事をエネルギーにして「定年10年前からゆっくり準備するコース」だという。どんなことでも準備期間は楽しいから、定年までの10年間が充実する。そして定年後の長い期間を一流の学者として過ごせるのだから、こんなにすばらしいことはない。
学者になる方法と銘打ちながらも、仕事を、生活を、人生を、自分を、もう一度見つめ直すことができる本になっている。やがて定年を迎えるすべての人に読んでほしい1冊である。(篠田なぎさ)
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