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官邸から見た原発事故の真実 これから始まる真の危機 (光文社新書)
 
 

官邸から見た原発事故の真実 これから始まる真の危機 (光文社新書) [新書]

田坂広志
5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (15件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

福島原発事故は、本当は、どこまで深刻な事態に陥っていたのか?「冷温停止状態」の年内達成で、一段落なのか?「汚染水処理」の順調な進捗で、問題解決なのか?「原子力の安全性」とは、技術の問題なのか?SPEEDIの活用、環境モニタリングの実施は、なぜ遅れたのか?なぜ、浜岡原発の停止要請をしなくてはならなかったのか?なぜ、玄海原発の再稼働を安易に認めるべきではないのか?―原子力の専門家であり、内閣官房参与として原発事故対策に取り組んだ著者が語る、緊急事態で直面した現実と極限状況での判断。緊急出版。

出版社からのコメント

◎緊急出版! 首都圏三千万人の避難は、なぜ、避けられたのか?

◎事故直後の3月29日から5か月と5日間、内閣官房参与を務めた原子力工学の専門家が、緊急事態において直面した現実と、極限状況で求められた判断とは?

◎福島原発事故は、本当は、どこまで深刻な事態に陥っていたのか?
「冷温停止」の年内達成で、一段落なのか?
「汚染水処理」の順調な進捗で、問題解決なのか?
「原子力の安全性」とは、技術の問題なのか?
SPEEDIの活用、環境モニタリングの実施は、なぜ遅れたのか?
なぜ、浜岡原発の停止要請をしなくてはならなかったのか?
なぜ、玄海原発の再稼働を安易に認めるべきではないのか?

【目次】
◎第一部 官邸から見た原発事故の真実

◎第二部 政府が答えるべき「国民の七つの疑問」
第一の疑問 原子力発電所の安全性への疑問
第二の疑問 使用済み燃料の長期保管への疑問
第三の疑問 放射性廃棄物の最終処分への疑問
第四の疑問 核燃料サイクルの実現性への疑問
第五の疑問 環境中放射能の長期的影響への疑問
第六の疑問 社会心理的な影響への疑問
第七の疑問 原子力発電のコストへの疑問

◎第三部 新たなエネルギー社会と参加型民主主義

【著者紹介】
田坂広志(たさかひろし)
一九五一年生まれ。七四年東京大学工学部原子力工学科卒業、同大医学部放射線健康管理学教室研究生。八一年東京大学大学院工学系研究科原子力工学専門課程修了。工学博士(核燃料サイクルの環境安全研究)。同年民間企業入社。原子力事業部にて、青森県六ヶ所村核燃料サイクル施設安全審査プロジェクトに参画。米国パシフィックノースウェスト国立研究所にて、高レベル放射性廃棄物最終処分プロジェクトに参画。原子力委員会専門部会委員も務める。二〇一一年三月二九日〜九月二日、内閣官房参与として原発事故への対策、原子力行政の改革、原子力政策の転換に取り組む。多摩大学大学院教授。シンクタンク・ソフィアバンク代表。著書60冊余。


登録情報

  • 新書: 261ページ
  • 出版社: 光文社 (2012/1/17)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4334036619
  • ISBN-13: 978-4334036614
  • 発売日: 2012/1/17
  • 商品の寸法: 17.2 x 10.8 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (15件のカスタマーレビュー)
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By 濱哲
  本書の著者「田坂広志」氏がアドバイザーとして首相官邸に呼び込まれたのは、東日本大震災発生から18日経った3月29日とのことなので、福島第一原発の危機がピークにさしかかろうとしていた頃。その点では、危機発生当初、肝心の時点での目撃証言ではないし、官邸入りしてからも、いきなり「増税論」を持ち出した財政当局との遣り取りについては触れてない(議論の場から排除されていた?)ところに、いささか物足りなさを感じるのは筆者1人ではあるまい。
  しかしながら、日本型官僚制の欠点をモロに見せつけたのが今度の大震災・原発事故といえよう。
  ルーティンワークや既得利権擁護には強いが、国際的な危機に直面しても、まず中央省庁の行政官僚が頭に浮かべたのは、おのれらの所属する集団の組織的利益であり、被災収束そっちのけに、所属集団の利益が損なわれるのを妨ぐことばかりに知恵を働かせる、あたかも幕藩体制下のお侍のごとき「お家大切の意識」体質。
  また、中央省庁や電気事業連合会に取り込まれたメディアの大半は、バニックに陥った菅直人首相の無能をあげつらい、彼一個の人格に責任転嫁を試みるが、こんどの東日本大震災は、日本型官僚制の危機管理能力&ダメージ・コントロールという問題への無思想ぶり、きっちり不都合な失敗をも記録して後世に残すのを怠る無責任体質、そのさきで日本国民を愚民視し「知らしむべからず」に奔る隠蔽体質など、おそらくは誰が首相の椅子に座っていても、そう大きな違いは生じなかったであろう「日本型官僚のムラ社会的縦割り体質」には頬かむりを決め込んでいる。
  第2次世界大戦に敗戦したとき既に日本という国家が、そうした無責任な官僚体質そのものの国家だったことは周知の歴史ではないのか。ましてや神戸地震のとき、腰が抜け判断停止に陥った村山富市首相の無能を散々こき下ろしたメディアが、今頃になって、ことさらのように持ち上るとは笑止というほかはない。
  本質的な問題は、日本型官僚(行政、業界、学界、メディア官僚を問わず)が、つねに仲間内の論理に終始し、疵を舐め合うような責任回避を最優先させる体質を持つこと、今回原発事故の本質的原因が、著者・田坂氏が語るとおり、「『人的、組織的、制度的、文化的』な要因から、技術者が『想定』していなかったことが起こるという落とし穴」に陥ったこと。「言葉を正確に使うならば、安全設計において技術者が行っているのは、『起こり得る全ての事態を想定している』のではなく、『想定し得る全ての事態を想定している』に過ぎない」と、要は現場を知らないデスクワーカーが原発の「安全」を牛耳っていたことが真の原因だとの指摘が至当な評価。
  まさしく、旧帝国陸海軍が「ノモンハン」や「ミッドウエー」で自らの犯した大失敗を隠蔽したのと同じ、国家とは、官僚たちの世俗的利益に奉仕するための存在に他ならないという論理であり、あの第2次大戦に敗北することになった「日本帝国型官僚の無責任体質」が、相変わらず現在まで引継がれていると見るべきが適確だろう。
  本書、これから始まる日本のエネルギー政策の議論に大きな一石を投じた書籍という点では、間違いなく日本国民の必読書に加えられるべき一冊といえよう。 
このレビューは参考になりましたか?
28 人中、23人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
本書は、内閣官房参与として2011年3月29日から9月2日まで原発事故対策に取り組んだ田坂広志が、各項ごとの質問に答えるという形式で構成されている。
インタビュー形式にありがちな論理展開のいいかげんさは、特に目立たない。地の文(答えの部分)が論理的にまずまず整理されているので、読みやすい。前後の文脈的なつながりも悪くない。その意味で、光文社の編集がきちんと仕事してるぞ、という印象を持った。

序盤では、原子力委員会のシミュレーション計算の結果にもとづき、福島原発事故は、<<最悪の場合には、首都圏三千万人が避難を余儀なくされる可能性があった>>と述べられている。これには驚愕したというより、やっばりそうだったんだ、という感じを抱いた。

著者が意を強くして警鐘を鳴らしているのは、政財官のリーダーの中に「根拠の無い楽観的空気」が広がっていることに対してだ。
福島原発事故の深刻さを直視せず、事故原因の究明もあいまいなまま、「もう福島原発事故は収束した」「もう同じ事故を起こすことはないだろう」という楽観的意見を危険な風潮とみなす田坂氏の意見には、全く同感である。

「除染で放射能は無くならない」という指摘も的を射ている。
※私見をいえば、「除染」は、(場所によっては)単なる気休めでしかなく、社会的コストを考えれば除染しない方がいいという選択肢もあるはずだ。

また、管内閣の官邸でのやりとりの一部をインターネットの動画を通して公開し、ツイッターでの意見やコメントを受け付けた「オープン懇談会」を提案し、実行にこぎつけた田坂氏の功績は評価されるべきだろう。確かに、著者がいうように「世界でも前例のない」出来事だったのかもしれない。このような“民主主義の実験”は、今後も試みられるにこしたことはない。

しかし、田坂氏は大きなカン違いをしていないだろうか?
【政府が答えるべき国民7つの疑問】の中の、第5の疑問「環境中放射能の長期的影響への疑問」に対する答えに、「精神的な被害」も「健康被害」(P184〜)というのがある。ここまでは良しとして、問題は次の、第6の疑問「社会心理的な影響への疑問」の項である。 
 
著者は、<<チェルノブイリ原発事故の最大の被害は、住民の「精神的ストレス」であったといわれています>>(P192)と宣い、
<<同様に、今回の原発事故の被害は、「物理的被害」や「経済的被害」だけでなく、長期的に見れば、この「精神的被害」が最も大きな被害になってくることを、政府と行政は理解する必要があります>>と結論づけているが、この意見はいったい何が根拠になっているのか? これだけのことをいうなら、その根拠を示すべきである。でないと、この意見は「物理的被害」の過小評価につながるという批判を免れることはできないだろう。
田坂氏は、たとえば『こうして原発被害は広がった 先行のチェルノブイリ』を読んだことがあるのだろうか。
同書を読むだけでも、<チェルノブイリ原発事故の最大の被害は、住民の「精神的ストレス」>と臆面もなく言い放つことはできなくなる、と思うのだが。

ちなみに、念のため指摘しておくが、本書でふれられている<<本来の『冷温停止』とは、健全な状態の原子炉について語られるべきことであり、福島原発のように、建屋も崩壊し、圧力容器や格納容器が破損している可能性があり、核燃料がメルトダウンを起こし、その形状も状態も分からなくなっている状態の原子炉に適用すべき言葉ではない>> (P35)という記述は、もちろん田坂氏のオリジナルな見識ではない。
たとえば、本日発売された『福島第一原発 ―真相と展望 (集英社新書)』でも同様の意見を、アメリカの原子力技術者のアーニー・ガンダーセン が述べている。

読みやすい本ではあるが、全体として、やや物足りなさを感じた。本のタイトルから連想するような、"官邸秘話"は書かれていない。
このレビューは参考になりましたか?
50 人中、39人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
本書は、東日本大震災後、福島第一原子力発電所の過酷事故を受けて、菅 直人政権の内閣官房参与として活躍した田坂 広志による「国民の方々へのメッセージ」の書である。あの未曾有の危機的状況の中で、個人的には、果たしてどのような思想や見識をそなえた人物が国家の意思決定に参与したのかということの一端を垣間見ることができる、非常に興味深い著作だと思う。
事故の発生以来、今日まで福島原発の事故状況に関しては徹底した情報統制が敷かれおり、その深刻さの全貌はまだ公にされていないが、こうした中で具体的にどのような問題意識が関係者の間で共有されていたのかということは、ひとりの読者として――また、ひとりの国民として――ぜひとも知りたいところである。
読者にとり、一番衝撃的なことは、最悪の場合、首都圏全域が退避圏内にはいる可能性があったということであろう(pp. 23-25)。実際には、福島原発の事故の発生後、数日中には、原子力資料情報室が、後藤 正志氏や田中 三彦氏を招聘して、インターネット上で連日懇切丁寧な状況分析を提供しており、その中でこうした「最悪の事態」がありえることは明確に示されていたわけであるが、田坂氏は、そうした認識が実は政府の関係者の中でも共有されていたことを明言している。結局、そうした最悪の可能性に関する情報は、パニックを回避するという大義のもと、最後まで国民に伝達されることなく終わるわけであるが、本書は、そうした判断がどのような思考をとおして正当化されたのかということを明らかにしている(そして、著者も一貫してそうした政府の判断の妥当性を支持している)。
本書のもうひとつの重要な貢献は、今後、日本の原子力政策の将来を確定していくうえで、検討されなければいけない7つの重要な疑問が整理されて呈示しているということである(第二部)。周知のように、野田政権の誕生後、日本の原子力政策は原発再稼働にむけて着実に動き始めているが、田坂氏は、今回の過酷事故をふまえた徹底的な調査と議論を経ることなく、強引に原発再稼働を推進することに警鐘を鳴らしている。実際、「冷温停止状態の達成」をはじめとする、あまりにも恣意的な用語の利用法にみられるように(「……そもそも、本来の『冷温停止』とは、健全な状態の原子炉について語られるべきことであり、福島原発のように、建屋も崩壊し、圧力容器や格納容器が破損している可能性があり、核燃料がメルトダウンを起こし、その形状も状態も分からなくなっている状態の原子炉に適用すべき言葉ではない……」 p. 35)、政府は積極的な認識操作に邁進しているわけだが、こうした状況において、意味ある思考と討議をするためには、国民がしっかりと理論武装をすることは必須の条件であり、第二部にまとめられた7つの論点は有益な道標となるだろう。
このほかにも、本書には数多くの価値ある洞察や提言が盛り込まれているが、その核心にあるものは、著者の田坂 広志という人の真摯な情熱と使命感であろう。とりわけ、第三部(「新たなエネルギー社会と参加型民主主義」)には、今回の未曾有の過酷事故を契機として、今後、日本がどのような社会をめざして舵取りをしていくべきなのかということに関する田坂氏の構想が縷々披瀝されており、その内容に多数の読者は共感を覚えることだろう。
このように総体的には共感を抱きながら読んだわけだが、同時に田坂氏の議論に釈然としないところが散見されたのも事実である。
ひとつめは、(これは元内閣参与としての守秘義務もあるのだろうが)本書には、今回の事故対応において、具体的にどのような組織や人物がどのような発言や判断や行動をしたのかということが全く掲載されていないということである。つまり、本書は、本質的には、あくまでも著者の思想や構想を披瀝したものであり、事故対応の現場において具体的にどのような利害関係者がどのような行動をしたのかということについては全く情報がないのである。そのあたりについては、読者は肩透かしを食らうことになるだろう。
もうひとつは、事故直後から、政府から発信された誤情報や情報隠蔽に対して、田坂氏が総じて擁護的な態度をとっているということである。とりわけ、枝野官房長官の「直ちに健康に影響はない」という発言に対して、平然と御墨付をあたえていることについては、愕然とし、その神経を疑った(「国民のパニックを避けるためには、やむを得なかったと思います。それが、後で色々と批判されるのは、不本意でしょう」p. 173)。「参加型民主主義」を提唱しているといいながらも、実際にはどこかで人々の叡智を信頼していない傲慢が散見されるのである。
そして、何よりも驚いたのは、原子力工学の専門家であることを自任する田坂氏が、今回の事故をとおして、「原子力エネルギーとは、ひとたび暴れ始めたとき、これほどまでに手がつけられない危険なものであったか・・」(p. 249)と述懐していることである。原子力発電所の危険性については、これまでにも長年にわたり指摘されていることである。とりわけ、今回の福島原発において発生した全電源喪失(station black out)の可能性についてはつとに指摘されてきたところである(しかも、そうした指摘をしているのは、田坂氏のように博士号をもつ人たちだけでなく、そうした資格をもたない人たちでもあるのだ)。田坂氏のこのような発言をみると、正直なところを言わせてもらえば、そもそも、しろうとでさえ予見できることさえも予見できずにいた、このような人に原子力発電について語る資格があるのだろうかという疑問を抱かざるをえないのである。
こうした意味においては幻滅をしたし、また、「脱原発依存」を語りながらも、同時にひとりの個人として脱原発に積極的にコミットすることは一貫して躊躇する田坂氏の姿勢には、姑息なものを感じる。田坂氏は、今後の原発政策に関する判断はあくまでも国民の判断であり、自分の判断ではないという立場をとるが、ひとりの国民としての自己の立場を表明しようとはしない。つまり、あえていえば、そこには、「あくまでも自分の責任とは、国民を啓発し善導することであり、ひとつの立場にコミットしてその実現に邁進することではない」という発想が見え隠れするのである。これまで長年にわたり原子力を推進してきた人間として「身を正す」(p. 44)ことの重要性を語りながらも、一方では、そうした責任者としての自己の立場を根源的に変化させることなく、重要な判断を国民に外注して逃避してしまう田坂氏の姿勢には、ただただ幻滅するしかない……。
ともあれ、本書には、今日の日本の治世層の思想的な牽引者として活躍する思想家の能力と限界が端的に示されていると思う。さまざまな意味において、興味深い著作である。
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