本書は、筆者がはしがきにも記載しているとおり、官僚について網羅的にまとめたものではない(網羅するためには、同著『
行政学』有斐閣、2009年との併読が必要)。あくまでも官僚制についての過去の主要理論を概観したうえで、ケーススタディを試みたものである。
前半の理論部分は、専門書にしては平易な文体で読みやすく、過不足なくコンパクトにまとめられている。また、日本の事例をふんだんに取り入れており、理論の中身を想起しやすい。たとえば、事業仕分けに象徴されるような「どうして官僚は自分の省庁の予算死守に奔走するのか」また、かつて世間を賑わせた「タクシー券問題」、皆が一度は感じたことがあるであろう「どうして市役所の職員はあんなに無礼なのか(失礼。。。)」、などなど、理論的な裏付けを持って説明されている。
しかしながら、後半のケーススタディで取り上げられている第一線公務員(交番の警官や、市役所の窓口係、ケースワーカー)の記述は、学術書というよりもややジャーナリスティックな色彩が強く、それは参考文献からみても伺える。また、司法官僚についての言及はまったくの議論途上で、蛇足でしかない。
よって、前半の理論編との整合性が弱く、なんのためにケーススタディしたのかがわからなくなってしまっているのが残念である。
いっそのこと、「P-A model(本人ー代理人論)」と「裁量」に絞って、本書全体を構成した方が、重厚かつ説得力のあるものになったのではないか。
※なか見検索ができないので、以下に目次を※
序 章 官僚批判のなかで
第1章 官僚制の権力
1 行政国家論か捕虜理論か?/2 専門的知識の力/3 専門的知識による影響力の経路/4 顧客団体の組織化と動員/5 政官関係:ヨーロッパと日本
第2章 官僚制の合理性
1 ウェーバーの官僚制論/2 マートンの逆機能論/3 セルズニックの逆機能論/4 ゴウルドナーの逆機能論/5 官僚バッシングとその背景
第3章 官僚制の2つのキャリア・システム
1 開放的システムと閉鎖的システム/2 組織指向型官僚制と専門指向型官僚制/3 低い不確実性の国:アメリカ/4 ウェーバーと日本の官僚制
第4章 委任と裁量
1 本人-代理人論/2 委任の程度を左右する制度
第5章 官僚の行動様式
1 ダウンズの官僚論/2 ニスカネンの官僚論/3 ダンリーヴィーの官僚論/4 予算極大化モデル VS. 組織形整モデル
第6章 第一線公務員
1 第一線公務員の重要性/2 第一線公務員の裁量/3 第一線公務員の職務の状況
第7章 司法官僚
1 裁判官のキャリアパス/2 最高裁判所の事務/3 裁判部門の官僚制化