いわゆる上げ潮派VS財政再建派といわれる自民党内の政策論争で、上げ潮派に立つ中川(秀)氏の政治に対する考え方を述べた本である。一方の財政再建派と言われる与謝野氏も「堂々たる政治」という本を出版しているので、読み比べると良いと思う。
週刊誌などで過去のスキャンダルに言及しているとの見出しが躍っていたが、そういうゴシップ的な考え方でこの本を手にとって見ると、政治に対する真摯な姿勢と非常に強い決意に予想外に圧倒される。いかにマスコミがワイドショー的に堕ちた偏見でこの本の出版を取り扱ったか、非常に残念だ。
それはさておき、この本を読んでいくと、いわゆる上げ潮派VS財政再建派という見方はちょっと違うのではないかという印象をもった。両方とも、国の財政についての問題意識は変わらないのではないか。強いて言うなら、党人派か官僚閥か、官僚を今も性善説で見ているか、どうかという点が、大きな違いだと思った。確かに優秀な官僚はあまた居るのだろうが、本書でみられる数々の「情報操作」の症例や、実際のマスコミ報道の踊り方などを見ると、「ステルス複合体」と形容される見えざる病巣に対して著者の心に思う問題意識は小さくないと感じる。
書かれている文章も非常に重厚で、これだけ霞ヶ関に嫌がられる内容でありながらの中身から推察すると、非常に優秀なスタッフや人的関係に恵まれているのではないかなと思う。本の厚さから、もちろん、官僚批判だけではなく、色々な政策や政治身上などについても書いてある。
残念なのは、これだけの固い決意を共有し、官僚達と喧々諤々の政策論争ができるような次を担う「政治家」が他にいるかどうかが疑問な点だ。中川氏は末筆に自分のことを「調整型」や「黒幕的」と書いてしまっており、実際、普通にテレビや雑誌などの色々な人の意見を見ていて思う印象もそうなってしまっているが、そういう変な印象を振り払って、この本に書かれている政策を、先頭を切って周りを巻き込んで、ぜひ推し進めて欲しい。
今の国会のワイドショー的な「政局」よりも、国民が求めるものは本書に書かれているような「政策」議論じゃないかなと思う。
何気なく読み始めても、最後まで読むと実はちょっと心にこみ上げてくるものがある。意外と良い本だ。