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最も参考になったカスタマーレビュー
15 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「宗教」を知的に考えたい人のために,
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レビュー対象商品: 宗教を生みだす本能 ―進化論からみたヒトと信仰 (単行本)
宗教についてかなり盛り沢山の内容だが、本書の一貫した主張は宗教が持つ社会的な機能の進化である。すなわち、人間社会ではグループの成員が利己心を抑制して、共通した価値観、道徳を有し、結束することで利害的に敵対するグループに対する攻撃と防御力を高め、その社会(グループ)全体の生存が有利になる。その機能(道徳的直感・本能)の形成を宗教が担って来たと主張する。その観点から、宗教的衝動が平和的・道徳的側面と戦争・残虐の側面の双方も持つことを解き明かす。こうして形成されてきた人間の宗教行動は後天的・文化的な要素のみでなく、淘汰の結果として遺伝的基盤にも根差したものとなっていると説く。ただしそれは現時点では仮説であって、十分に検証できたものではないとも認めている。 人間に遺伝子レベルに根差す「道徳的直感」があるかどうか、あるとすればそれはどのようなものであるかは、かなり議論を呼ぶテーマだろう。現代の言語学では言語は全くの後天的・文化的な学習の産物とは言えず、言語構造としての文法には「メタ文法」とでも言うべき基本構造があり、それは人間の遺伝子的なレベルの特性に根ざしているという議論が有力だそうで、宗教の核にある「道徳的直感」も同様だと言う。 人間は道徳的な判断の理由を求められると、理屈をつけて説明するが、実はそれは無意識下に根ざしている道徳的直感を意識が正当化しているだけだ。実際に道徳判断は突きつめると合理的な説明は不能だと論じる。 そこで登場するのが、マイケル・サンデル先生のベストセラー「正義」で登場した「暴走する路面電車」の事例だ。「正義」を読んだとき、このたとえ話はサンデル先生のオリジナルかと思ったが、そうではなかった(「正義」ではその点は本文には書かれていないが、引用文献として掲載されていた)。サンデル先生はこの事例を功利主義的思想とそれに対する批判の構図を説明する材料に使っている、と私には読める。 しかし「暴走する路面電車」の事例は道徳哲学者フィリッパ・フットの考案で、道徳的な推論では合理的に説明できない道徳的直感を人間が持っていることを考察したものだった。道徳直感に関して心理学者のマーク・ハウザーは、「接触原則」「意図原則」「行動原則」の3つに整理する。その内容については本書を読んで頂きたい。 経済活動を含む人間の社会を、利己的で合理的な諸個人の選択の結果として説明するアプローチは、その最たる経済学の分野でも破綻が見えている。アダム・スミスが「諸国民の富」と合わせて残した著書は「道徳感情論」であり、人間の道徳的な基盤を考察するものだったことも近年再評価の対象となった。そういう点も含めて考えると、仮説的ではあるが、本書はとても知的に刺激的な内容だ。 ユダヤ教、キリスト教の起源、形成過程に関する章も興味深い。「イエス・キリスト」となった人物が現代に蘇って、あるいは5世紀に蘇ったという仮定でも同様だが、その時代に唱えられている「キリスト教」に接すれば「これは私の宗教ではない」と言うことは、まず間違いないと思う。
21 人中、18人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
宗教の転換期,
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レビュー対象商品: 宗教を生みだす本能 ―進化論からみたヒトと信仰 (単行本)
今、宗教に注目する理由はいくつかある。思い返せば、地下鉄サリン事件が起きたのは、阪神淡路大震災が起きた二ヵ月後だったわけだし、ビン・ラディン殺害の余波だって油断はできない。人は自分の想定を超えるような出来事が起こると、超自然的なものへと導かれやすい傾向にあるのだ。本書の著者はイギリスのサイエンス・ジャーナリスト。科学を生業とする人には、宗教に批判的な人も多い。有名なところで言うと、本書にも登場するスティーブン・ピンカーやリチャード・ドーキンスなど。リチャード・ドーキンスに至っては『神は妄想である―宗教との決別』という著者まで出しているくらいだ。仮に公言していないにしても、科学と宗教の間には埋めがたい溝がある。 ところが、本書のスタンスは一風変わっている。宗教の必然性を、人間の進化学的な見地から解明しようという野心的なものである。 ◆本書の目次 第1章 宗教の本質 第2章 道徳的本能 第3章 宗教行動の進化 第4章 音楽、舞踏、トランス 第5章 太古の宗教 第6章 宗教の変容 第7章 宗教の樹 第8章 道徳、信頼、取引 第9章 宗教の生態学 第10章 宗教と戦闘 第11章 宗教と国家 第12章 宗教の未来 人間には本来、道徳的判断にかかわる脳内神経回路が存在しているという。この先天的に保持する道徳的直観の存在ゆえに、宗教は普遍性を生み出しており、世界中に存在する宗教には共通点も多い。誕生、成長、結婚、葬送などの通過儀礼や、そこに伴う音楽などもその一例である。 これらの道徳規範は、集団の淘汰と直結した。個体より集団全体に利益を与える遺伝子の方が一般化するという説は、ダーウィンのあまり知られていない主張である。これらの道徳的規範を守るためのソリューションとして宗教は生まれてきたというのである。 このように宗教と人間との関連性を、生物学、社会科学、宗教史的な観点から分析している点こそが、本書の最もユニークな点である。その他にも、三大一神教や太古の宗教の検証、宗教と経済活動、社会形成、戦争との関連にも丹念に触れており、全編を通して理路整然としている印象を受ける。 しかし著者も、諸手をあげて宗教を容認している訳ではない。現在の宗教は、複雑さを増す人間社会の変化に遅れをとっていると指摘し、第二の転換期を迎えるべきと主張する。 宗教が司ってきた道徳的規範の構成要素は、「友好関係」、「共感」、「社会ルールの学習」、「互恵の観念」であるそうだ。この四つのキーワードを見て、いささかの衝撃を受けた。ひょっとすると、宗教の役割は、ソーシャルメディアに取って変わられつつあるのではないだろうか。
7 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
宗教の役割,
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レビュー対象商品: 宗教を生みだす本能 ―進化論からみたヒトと信仰 (単行本)
宗教を否定はできない。信仰、祈りが人々を統制してきたのもまた事実。 欲望が文明を発展させたのと同じように。 祈る、とはやるべきことをやり終えた者だけがとれる最後の手段。 ただなにもせず祈るだけではその境遇は決して変わらないことを痛感させられる。
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