本書、オウム真理教事件を自分の事柄として引き受け、あくまで誠実に、真摯に、そして執拗に思索している。安易な結論に流れず、問題の根本へと食い下がりつつ、これだけ正面から肉薄する著作も珍しいであろう。著者はなりふり構わず自らの私的な体験を投げ込み、目をそらすことなく自分の中のオウム真理教事件と向き合い、自分の脆さ、弱さ、醜さを抉りだし、そうした弱さをはっきりと認めつつ、いかに生きていくかという筋道を模索する。自分の中の暗部をさらけ出しながらの、血みどろの格闘は、迫力があり、感動的である。自分の弱さ、脆さを認め、そうしたものを抱え込みながら、等身大の、生身の人間として思索の場に踏みとどまって格闘することを選び取るというのならば、著者の姿は一つの、そしてある意味においては唯一の先達のそれである。しかしながら、それはなんと過酷で、不幸な姿であろうか! 著者の提示する、支え合う孤独な者達のネットワークの姿が不幸なのは、本当の意味での師弟、本当の意味での人間対人間のぶつかり合いを知らないことにあるのだ!!! 本書から見えてくる時代の闇は、深い。