明治の世もなかなか落ち着かず、江華島事件から始まった征韓論に続いて不平士族の反乱があちこちで起こる騒然とした時代を描いています。
その中で、「武士」たちの様々な生きざまが活写され、主人公の完四郎の心も乱れます。
主義に殉じ行く「武士」たちは、「国」への思いを胸に一途に迷いなく「死」んでゆきます。
時代から取り残された「武士」と言う存在の行き着く先を、対照的に描いてゆきます。
倒幕の動きの中で生じた敵味方が、所を変えて新たな敵味方となり、複雑な人間模様を描きます。
作者は、主人公完四郎を通して、そうした時代に翻弄された人々への鎮魂歌を奏でているかのようです。
西南戦争前夜の騒然とした時代を、そこに生きた「武士」を通して描き切っています。