起業するときに最低限知っておくべき知識とコツを書いた本です。起業の判断、事業計画、資金調達、自己資本経営、人材採用、マーケティング、業務提携、正直であること、などです。
今起業を考えている人、既に起業して走り出した人、企業の中で新規事業を計画している人は言うに及ばず、企業で働くすべての人に役立つ知識に溢れています。
一部を紹介すると、たとえば、ベンチャーキャピタルから資金を得るためのプレゼンテーションの方法は、営業など一般の場合にも大いに参考になります。著者曰く10/20/30 の決まりです。スライドの枚数を10枚までにして要点を絞る。でないと発表の印象が散漫になる。一時間の打合せでも20分を前提にする。質問の時間を見ておく。フォントサイズは30ポイントにして文字数を減らす。遠くからもよく見え、聞き手が文章を読んでしまい話に集中しないのを防ぐ。
また、人材の採用について、著者は A-Player を雇えと言います。一番仕事が出来る A-Player は(たぶん仕事優先で)同じ A-Player を採用する。しかし、少し劣る B-Player は(たぶん保身優先で)更に少し劣る C-Player を採用する。そうすると、少しずつ劣る人を採用する連鎖が始まり、最後は Z-Player になってしまいます。
以上はこの本のほんの一部です。もっと沢山の参考になる考え方、詳しい説明があります。本を読むときに付箋を挟むのですが、100枚綴りの付箋紙を使い切ってしまいました。こんなに挟んだのは初めてです。
著者がアップルの創成期に関わったこと、ベンチャーキャピタルの経営に携わっていること、その経験が生きています。本で学んだり他人から聞いたりした話ではなく、実体験から学んだ知識ですので、いわゆる経営コンサルタントや学者の本とは一線を画すものです。特に失敗の体験は重要です。
分りやすくユーモアのある文体です。特にところどころにある exercises には必ず吹き出すでしょう。たとえば、一時期ドットコムがバブルの頃に流行したらしい高価で cool な椅子について、 "Go to eBay and search for used Aeron chairs" という課題を課しています。
購入前、
Reality Check と迷いましたが、あちらはページ数が500ページ近い大冊だったので、最初の一冊の様子見にその半分以下のこちらにしました。こちらも十分良い本です。
なお、著者がこの本の内容に基づいて講演した動画がネットに幾つかあります。本で読む以上に迫力が伝わってきます。Yで始まる有名なサイトです。
以上、原著
The Art of the Start のレビューに書いた内容をこちらに転記しました。
〔追記〕
翻訳を原著と読み比べてみました。うんと上手とは言えないかもしれませんが、大きな誤訳はないと思います。ただし、上に引用したA-Playerのところは「A-プレーヤーはB-プレーヤーを雇う」になっていました。B-プレーヤーは一つ下のC-プレーヤーを雇いますが、A-プレーヤーは同じA-プレーヤーを雇います。翻訳者は早とちりしたのかもしれません。