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完全な真空 (文学の冒険シリーズ)
 
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完全な真空 (文学の冒険シリーズ) [単行本]

スタニスワフ・レム , 沼野 充義
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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登録情報

  • 単行本: 309ページ
  • 出版社: 国書刊行会 (1989/12)
  • ISBN-10: 4336024707
  • ISBN-13: 978-4336024701
  • 発売日: 1989/12
  • 商品の寸法: 19.2 x 14.2 x 2.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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架空の書評集 2002/2/19
By カスタマー
現実には存在しない本の書評集というボルヘス的なアイデアが面白い。例えば、ジョイスの「ユリシーズ」「フィネガンズウェイク」にインスパイアされた(架空の)小説「ギガメシュ」について。ただひたすら否定を繰り返す(架空の)小説「とどのつまりは何も無し」について。著者の誕生する確率を250万年前までさかのぼって算出する「生の不可能性について」などなど「架空の書物についての書評」という利点を思いきり利用して遊んでいます。作者の該博な知識に裏打ちされた架空の書物たちはある意味、実際に存在する書物よりも魅力的だったりします。そんな現実なのか非現実なのかわからなくなる一瞬を楽しんでみてください。
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12 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By b-p01
この本は「“架空の本”について
書かれた“架空の書評”集」です。

本文より先に「あとがき」や「解説」を読むということは、その本が
面白そうかどうかチェックするためだったり、はたまた読書感想文を
(本文を読まずに!)手っ取りばやく書くためだったり、理由は様々
にせよ多くの人に経験があることでしょう。

そうしたときに読む「解説」や「解題」は、知ってはいけない秘密を
垣間見ているようなスリルや、内容を知らないがゆえにかき立てられ
る実作品への興味などがない交ぜになって、不思議と面白いものです。

この本に書かれているのはあくまで“書評”ですが、私自身は作中で
言及されている“架空の本”に対して、同じような感覚を覚えました。

難しいことは考えず、そうした楽しさだけでさらっと読むことも十分
可能だと思います。
----------------
しかし、やはりそれだけでは済まない部分も確かに存在します。
例えばこの本の冒頭にある、“『完全な真空』に関する書評”はその
一例でしょう。なぜならこれによって、この本の「“架空の本”につ

いての“架空の書評”集」という形式を、この本自身が壊してしまう
からです。

読者(実際に本を読む私たち)が現実に目にしている本が、“架空の
本”たちと同様に扱われている。これは例外的なことなのか? この
書評に書かれた『完全なる~』と我々が読んでいるこの本は、違う物
なのか? それとも『完全なる真空』という書物自体が存在しないと

でも言うのか?
----------------
さすがはレム、です。

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 ロラン・バルトは『エッセ・クリティック』において「メタ書物」という概念について語っている。

いわば文学をたえず明日に延ばして、いつまでも いまに書くぞと宣言し、この宣言そのものを文学と化す[……]。(「文学と記述言語」p142)

 端的な言い方をするならば、これは要するに「書かない」ということである。何を書くか、どのように書くか、そのことばかりを言い続け、しかしそれを決して文字として固定しない。それが理想の文学のあり方ではないか、とバルトは述べているのだ。何故にそれが理想か。何故ならその文学は、常に流動的であるからだ。流動的であるが故に、いかなる形式の批評でも成功しない。つまりは固定した解釈を許さない。別の言い方をすれば無限に多様な解釈を許容するということでもある。
 レムはバルトと逆である。逆でありながらバルトと同じ地点を目指す。存在しない書物の批評によって。それは「非=在」の指示である。「そこだよ」と「ないもの」を指さす。それと同じことだ。「私はこの本を、このように読んだ」と言いながら、「この本」そのものは存在しない。ただ批評だけがある。批評は畢竟、余剰である。その「余剰」しか存在するもののないパラドクス。批評は解釈の固定であると言ったが、存在しないものを固定することなど不可能である。つまりは「メタ書物」の作者と同じことを、逆方向から行なうのがレムの「批評」である。この批評によって、批評された書物が「メタ書物」として現前する。現前するとは言うが、実はそんな書物は存在しないわけで、従って正確には「不在として」現前するのだ。その上、この虚構批評の中には『完全な真空』そのものの書評まで抜かりなく収録されている。つまりは実体として存在するはずの書物が、形式上「存在しないもの」として扱われているわけだ。周到に構築されたクラインの壺。一言で言えば「ややこしい」。
 それはともかくも、例えば『とどのつまりは何も無し』や『生の不可能性について』などは、読んでみたいと強く思う。
 存在しないんですけどね、そんな本。
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