私がそうだからみんなもそうだろう、という意味合いで言うのではないが、いま、「安部医師、というエイズ事件関係の医者」のことについて聞くと、概ね「あああのエイズ発症に責任がある帝京大学の医者だった人ね。」で始まり、安部医師が重大なエイズに関して責任のある医師で,且つ製薬企業のためにエイズ患者を死に至らしめたと思い込んでいる人が多数だ。その中には医師など医療関係者は除いて、かなりの知識人まで含まれるというから、一般の人が、いかに中途半端な関心しか持たずに、マスメディアの垂れ流したいい加減な情報を刷り込まれていたか。今もって安部医師は悪人、と思い込んでいる。(私もそうだった)
本書を読んで、それがすべて誤りであるという事が完膚なきまで立証され裁判所が容認していることが分かる。裁判所の判決も詳細を極めている。
読んで慄然とする。一度マスメディアに悪の印象を植え付けられると、よほどのことがないと致命的だ。かなりの数の冤罪があってもおかしくない。
安部医師のように有能な弁護団を擁することができて無罪を勝ち取っても、社会的には“有罪“のままの状態だから恐ろしい。一審無罪を勝ち取りながらも、控訴審途中で亡くなった安部医師の心中いかばかりだったろうか?想像するに余りある。本書の出版、公開によってかたくなな社会の誤解は解けて薄れていくだろうが、かなりの時間がかかるだろうな。
ともかく本書を読む理屈はいい。まず読んで考えてみることだ。弁護士の書いた裁判関係の本にしては内容は読みやすい。メディアのいい加減さも知っておくべきだろう。私など普通なら目にすることも、読むこともない出版物である。読む機会が得られたことを感謝する。本書出版の社会的意味は小さくない。(非加熱製剤によってエイズになったかたがたの救済問題とは別にして)