この夏、直島に行く機会があり、安藤忠雄の建築に関する本が再読したくなった。
直島の家プロジェクトのひとつ、南寺。いつもはコンクリートを使う建築家がコンクリートではなく木を使っている。なんとなく気になっていた。
昨今、さまざまな建築家による美術館が話題を呼んでいるが、美術家と建築家の間には葛藤がある。建築家は完璧な建築物を目指すが、美術家は完璧すぎる場では制作意欲がわかない。
本書によると、多くの美術館を手がる安藤氏は、「美術館は器だけではだめだ、器をどういうふうに生かすかが問題だ」と提案し、美術館をつくるときは場をつくって、あとはできるだけ空けたままにしておく。作家が来たら、よし制作してみようという場をつくるのが設計家の仕事だと思っているという。
南寺はアーティスト、ジェームズ・タレル氏とのコラボレーション。木でつくったのは、場所を強く意識したうえでの選択。気になっていたことが合点がいった。
10年前に出版された本なので、ベネッセハウスの美術館名は直島コンテンポラリーアートミュージアムであり、もちろん地中美術館などそれ以降の作品について書かれていないのは仕方がない。むしろ10年たっても、まだ進行中の直島プロジェクトのスケールの大きさと、クライアントの強いリーダーシップが印象に残った。
読む前はガイドブック的な本かと思ったが、むしろ多くの示唆と気づきに富んだ本だった。