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にもかかわらず,日本人の言う「信頼」は,グローバルな社会にあっては,むしろ人間関係の障害になりかねないと警告する.つまり,我々のいう信頼は実は本当の「信頼」ではなく,本来は「安心」とでも呼ぶべきものであり,「内なる人々に向けた“安心”」は,実は「“外”の人間を分けへだてる“障害”」になっていると指摘する.
こわいのは,そうした矛盾を知らず知らずに,しかも無邪気に再生産しつづけてしまう我々の意識と社会的システムである. 著者はこうした「社会的矛盾」に真っ向から取組む気鋭の学者である.
根源的テーマに挑み続ける著者のそんな姿勢は,読者に,「大事なキーワードは自分のアタマでしっかり考えなければいけません」と迫っているようにさえ感じられる.
人々は,現代を不確実な世の中だと嘆く.しかし,“人こそが最高の不確実な存在”なのではないだろうか.とすれば,不確実というコインの裏には『無限の創造性や可能性』が潜んでいると前向きにとらえることもできるはずである.
とすれば,問題は不確実性そのものにあるのではなく,人間を含む「不確実なもの」を“与件”としてしっかり見据え,その上で,『本当の信頼構築』に向けた“我々の正しい理解と日々の行動”が求められているのだと思う. 本書はそうした,いわば“信頼構築の旅だち”に向けたガイドとなる好著である.しかも,新書版でもあり読みやすい.
すでに何人かの友人や後輩に紹介してきた.「信頼」について考えあぐむ人たちであるが,異口同音にその鋭い問題提起に感嘆している. 著者の前著「信頼の構造」(日経文化図書賞受賞,東京大学出版会)の姉妹編である.余裕あればこちらもあわせて読むことをお薦めしたい.
社会心理学者の著者は豊富な実験データをもとに、我々の常識を覆してゆく。終身雇用や就職男女差別、あるいは大学偏差値などの問題も「信頼」の観点から切り込んでいる。難しい論理を展開させることなく、平易に説明しようとする著者の努力がうかがえるし、実際とてもわかりやすい。一つ難を言うと、実験の説明がやや冗長でそこは読んでいて疲れる。だから星四つ。
情報が隠匿あるいは操作される社会や、多くの人が多くの可能性を奪われた社会では信頼の文化は育たない。「知らぬが仏」ではなく、知りたいことは知る、教えられることは教える、そしてそれらの権利が守られる、個人個人も努力する、そんな簡単なことが信頼社会を築く一歩となるはずだ。
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