本書は3部構成です。
第1部においては、犯罪白書などの統計データを実証的に読み込み、
体感治安と現実とのギャップをあぶり出します。
この統計の読解過程だけでも十二分の価値があります。
そして米仏などの犯罪実態との比較を交えながら、
徐々に焦点は犯罪の少ない日本社会の分析へと向けられていきます。
第2部は、いわゆる世間論を念頭に、
我が日本社会が犯罪にどう対処してきたか、
またなぜ市井の我々が安全神話を信じるようになっていったかが、
刑事法システムのみならず、
タブーも含めた様々なバックアップシステムにも言及しつつ、
ときに大胆に検証・回顧されていきます。
第3部は、第1部、第2部を前提に、
では、安全神話崩壊後の我が日本社会において、
いかにして犯罪と向き合っていくかの提言がなされていきます。
キーワードは「共同体」に集約できます。
一読して思ったのは、
本書を魅力的なものにしている最大の原因は、
著者のざっくばらんな語り口にあるのだろうということです。
一見分厚い書物ですが、サクサクと読めてしまうことでしょう。
また、従来の左右・保守革新といった軸を離れ、
同時に、安易に欧米の業績に依拠することなく論証する姿勢にも好感が持てました。
近所の安全が気になる親御さんから刑事司法の実務家まで、
幅広い読者を惹きつける好著だと思います。