娘の教科書にこうあります。
「ダイオキシンなどによる環境ホルモン問題は、今後の人類に及ぼす影響が憂慮されている。」(伊東光晴他著『高校現代社会』)
教科書では未だにこういう記述がされています。日本人がリスクと付き合う方法を知らない理由の一つが教育にあるのは、間違いないでしょう。
著者のスタンスは、
「科学技術を否定して恐怖を煽り、現実の安全性が高まるわけでもないのに、自然に帰ればすべてがOKであるかのように主張する人たちには反対したい。」(p.42)
とあり、私も同感です。
安全でも安心できない最大の理由の一つが、本書で紹介されている「感情ヒューリスティック」で、感情を手がかりとしてリスクについての判断を下す判断法のことです。これは、ダマシオが『
デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳 (ちくま学芸文庫)』で提唱したソマティック・マーカーに近い考えで、限られた時間内で、急いで判断しなければならない場合に有効なものです。この機能を担うのは、進化の早い段階でできた脳の部位であり、動物と共通の判断メカニズムです。端的に言えば、快・不快の基準で正・誤を判断するものです。
リスク問題は、秒から分のオーダーで判断しなければならないというような問題ではなく、本来であれば時間をかけて、理性的に判断すべきものですが、往々にして「感情ヒューリスティック」のまま思考停止に陥ることで、様々な衝突が起こるのでしょう。
この解決は、著者が最後に「夢想的なこと」として述べるように、『すべての人が「自分の中にある相手の立場」を理解できれば、社会のリスクマネジメントをもっと健全なものにできる』という点にしかないのかなと思います。具体的な解決策は、高校までの教育にかかっているのではないでしょうか。