神秘的で全能の晴明様偶像が、それなりに浸透しつつある昨今。
「晴明本」は数々あれど、小っ恥ずかしくなるような少女趣味な表紙には流石に手が伸びない。
岡野玲子の『陰陽師』の世界に書き込まれている深い宗教観や歴史的背景もふまえた、信頼できる解説書がほしい。
そんな思いを満たしてくれる一冊でした。
信頼できる記録・史料を元に、安倍晴明の実像と陰陽道発展に果たした役割が紹介されています。
とはいえ、事実だけを淡々と記した無味乾燥な評伝という趣はありません。歴史学者や国文学者ではなく、民俗学のフィールドワーカー且ついざなぎ流太夫の「弟子」でもあるという筆者の視点には、時空を越えた先達である晴明への、同業者としての敬意も込められているようで、晴明ファンにも容易に感情移入できます。
刻々と新たな研究が登場し、次々に新事実が明らかになっていく陰陽道研究の最新状況も伝わってきて、研究入門書としての役割も果たしています。