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5つ星のうち 4.0
亡くなった小松左京氏のSF第一作「地には平和を」を収録,
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レビュー対象商品: 宇宙塵傑作選〈2〉日本SFの軌跡 (単行本)
7月29日付の読売新聞編集手帳で、先日亡くなった小松左京氏のSF第一作として紹介されていたので手に取ってみた。もし8月15日に戦争が終わっておらず、本土決戦になっていたら・・・という「ヒストリカル・イフ」を扱った作品である。玉音放送の直前、クーデターが起こり、終戦ではなく戦争継続の決定がなされた。米軍は本土に上陸し、中学生、高校生までがゲリラ戦に投入される。少年たちが戦争で死んでいく悲惨さを憎みつつ、国を守るために命をかけて戦う少年の純粋さを認めて、両者を並行的に描いている。 ゆがめられた歴史を修正するために未来から来た時間管理庁の捜査員と主人公の少年兵にこう語らせている。 「日本が無条件降伏なんてする事があってたまるもんか!」 「それが本当の歴史なんだよ」 「8月15日の無条件降伏が唯一の正しい歴史だということがわからんのか?」 「なぜそれが正しいんだ?」 「俺が、何のために闘い、何のために死ぬと思うんだ。俺は国のために死ぬことを、ほこりに思っているんだ」p180 しかし「正しい」歴史では、ある日突然国のために死ぬ覚悟を取り上げられ、それまで価値観が天地さかさまになった。田原総一郎氏は、終戦の日、声をあげて泣いたと「日本の戦争」に書いていた。昭和7年生まれの亡父からも同じような話を聞いた記憶ある。この世代の自我の中には間違いなく「断層」があるのだと思う。 「地球の一割に達するこの殺戮を通じてもたらされた戦後の世界がいったいどんなものだったか、君たちは知っているか?(中略)そんなことなら、日本はもっと大きな犠牲を払っても、歴史の固い底から、もっと確実なものをつかみ上げるべきだった。(中略)日本という国は、完全にほろんでしまってもよかった。国家が滅びたら、その向こうから、全地上的連帯性をになうべき、新しい”人間”が生まれてきただろう。」p185 時間をさかのぼって「なかったはず」の歴史を作ろうとしたマッドサイエンティストに、小松氏はこういわせている。ここから何かのイデオロギー的な主張を読みとることもできる。が、おそらくそれは本質ではないように思う。十代半ばの多感な頃に受けた人格的な自我の「断層」を埋めるための作品、だったのではないだろうか。 作品としてはシンプルでさしたる仕掛けもないが、それだけにエンターテイメントではない、純文学としてのSFを感じた作品であった。ご冥福を祈りたい。
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