トルコではほとんど誰にも相手にされなかった孤独なコメディアン、セルカン氏。ところが日本の人たちは、氏のベタなジョークをなんでも真に受けてしまった。氏のことをスキー選手、科学者(?)と誤解している読者が多いが、氏はもちろん冗談のつもりで言っているのであった。なにせ昔からずっとコメディアン一筋なのだから。そのハッタリぶりは見ていて天才的である。
遠路はるばるトルコからこの男が日本社会に伝えたかった熱き思い、、、それは東大であろうがJAXA(宇宙航空研究開発機構)であろうが、ハッタリさえかませば職をとれるよ、みんなもめげずにがんばろうよ、といった不況にもめげない底抜けに明るい―しかし一歩間違えば犯罪行為になりかねない―メッセージだったのかもしれない。
また、氏の画像加工技術は群を抜いており、彼のコラージュ作品は、現実の物と誤解するほどの腕前である。しかし、現実の世界でも研究論文の内容までコラージュしてしまったことにより、この壮大な叙事詩はついに終焉をむかえることになる。氏は経歴詐称という罪を犯してしまったのである。他人の論文の著者名を平気で自分の名前に入れ替えたことはまだしも、東大に提出した自身の博士論文の内容ですら疑わしい。
そんな現状で氏が今一番欲しているモノ、それこそが「宇宙エレベーター」である。氏の帰るべき場所はもはや地上には見いだせない。「宇宙エレベーター」で現実の世界から脱出(逃避)するしか手はないのである…
タイトルだけ見てこれを科学的な本だと誤解する読者がいたとしたら、私はとても悲しい。大変な間違いである。地上にはもはや安寧(=受け入れ先ともいう)を見いだせなくなった氏の魂が唯一帰還を許される最果ての地「暗黒の宇宙」。この本はそんな、究極の現実逃避ツールとしての「宇宙エレベーター」を切望している氏のあまりに切ないファンタジーであり、妄想へのレクイエムでもある。
孤独な男の目指す宇宙に輝ける星はただ一つで充分である… 暗い宇宙に思いを馳せ、評価をあえて「星一つ」とさせていただいた。