書名から多宇宙について、超ひも理論からのランドスケープや宇宙進化に
おける人間原理の位置づけなどについて論じたもののように思われますが、
書名は本書の最終章の題名にすぎず、上記について論じた部分はわずかです。
著書のなかの一つの章から書名をつけたものに、
宇宙に果てはあるか (新潮選書)もありますが、これは最近のはやりでしょうか?
ネットで買う人は書名はその本のテーマであると考えます。
書名は中身に合ったものにして欲しいと思います。
本書の全8章の半分の1〜4章は暗黒物質(ダークマター)に充てられています。
暗黒物質についての研究はこの10年間で飛躍的に進歩し、とくに2003年以降に
暗黒物質の存在を裏付ける重要なデータが多く蓄積されています。
本書はその最新データをいち早く紹介しています。
しかし、この部分は本書の2か月前に出た
宇宙進化の謎 (ブルーバックス)と重複しています。
最新の宇宙論を紹介する出版競争も激しいようです。
5章は(暗黒物質ではなく)暗黒エネルギーについて宇宙の膨張速度の加速から
説きおこし、アインシュタインの宇宙定数などに触れるもので、既知のデータを
もとにした基本的な部分をまとめています。
6章、7章は多次元宇宙・異次元の話です。
万物を統一する理論の樹立のために最後に残された重力という難題について
重力の特殊性を余剰次元で説明することにより、統一理論を完成させようという
のが、最近の有力な理論であり、これを簡単にまとめています。
8章が「宇宙は本当にひとつなのか」を論じた唯一の章です。
書名から多宇宙論や人間原理が中心かと思い購入しましたが、簡単に触れている
程度です。個人的には、8章のテーマを中心にして欲しかったと思います。