宇和島という地方都市は、今再生の途上にある。再生という言葉を使う以上、そこには過去に大きな繁栄と歴史に大きな独自性・付加価値があったということを意味している。
宇和島はこれまで、歴史・文化・自然を持つ観光地としては全国にほとんど知られていない一介の地方都市であった。しかし、それはこの都市の本質ではない。これまで宇和島が全国によく知られてこなかった原因は、宇和島という都市にある面白い歴史・文化・自然を全国に強く情報発信する意欲的な行動者が出てこなかったからであり、実は 司馬遼太郎の歴史小説の中にもたびたび取り上げられている歴史的観光地としての素材は大きな潜在力を持っている。
こうした今だ開拓の余地が大きく残されている宇和島の歴史・文化・自然を全国に強く発信しようとする動きが最近出始めた。それがこの宇和島藩でも見事に実行されている。
詳細な調査と、どの年代の読者にも、簡潔にまとめられ読みやすく工夫された文章を駆使して宇和島の面白い歴史を一冊の本に仕上げた筆者の情報発信の強い意欲と実行力に敬意を表したい。
仙台伊達正宗から引き継いだ幕末・維新にいたるまでの歴史と伝統・文化にこれまで知られてこなかった面白い逸話が、よどみなく連なっている本文は、その面白さから我を忘れて一気に読み進めてしまう。宇和島の歴史は、常に日本の歴史と連動して動いていた様がよくわかる。筆者もこれらの素材を楽しんで書き下ろせたことにやりがいを感じてきただろう。
教養や知見が自然と入ってくる以上に、面白さから一読をすすめたい秀作である。