ランクヘッドが3年ぶりに「傑作」を出した。
ここまで素晴らしいアルバムは「月と手のひら」以来だ。
という訳でランクヘッド、先月のベストアルバムに続いてのニュー・アルバム。
オリジナルとしては去年の「FORCE」以来、10ヶ月ぶりの作品。
別に3枚目と4枚目が嫌いだった訳じゃなく、もちろん購入して聴いていたが
やはり2枚目までの胸を掻き毟るような、聴き手に訴えかけるような張り詰めた作品群と比べると物足りなかった。
別にポジティブになるな!ということじゃない。前向きな方向性でも説得力や描きかたによって傑作はゴロゴロ制作されている。
じゃあ描きかたが悪いのか?と問われれば「悪くない」、むしろ良いほうと答える。
つまりロック・アルバムとしては中々の作品だったことは間違いない。と、思う。
ただやっぱり「ラックヘッドのアルバム」としてはやはり今作「孵化」の方が魅力的だと思う。
比べるのはいいことではないけど、やっぱり楽曲の個性や迫力、伝わってくるものが段違いだ。
ランクヘッドはやはり辛気臭い歌の中から、希望を見出すという方法論のほうが個性を上手く出せるということがこのアルバムで証明されてしまったのではないか。
非常に攻撃的で、荒々しいアルバムだ。まるで鋭く尖った刃のような楽曲群は
聴き手の心をダイレクトに引っかきまわすほど、衝撃的で聴き応えがある。
全体的にギラギラした感触のアルバムで、かつての方向性に戻った感じもするが
やはり一回希望を描いただけのことはあり、以前のものと全く同じってわけでもない。
今だからこそ出来るランクヘッドの音楽が存分になっている。
単純に、「力強く絶望を歌う」という方向性にシフトしていると思うのだ。
一曲目の「id」からして真正面から否定的な歌と尖ったサウンドを剥き出し、
そのまま前作までとは正反対のギラギラしたロックンロールの応酬が展開される。
そんな中で「サイダー」や「海月」などセンチメンタルな楽曲を入れてしまえるのも
成長や進化を感じさせてくれる。
もちろん衝撃的な楽曲も忘れない。「ぐるぐる」という自暴自棄になったような楽曲では
狂気すら感じさせる歌い回しを堪能でき、「ペルソナ」は更にその上をいったような
ヤケクソっぷりが光るロックナンバーに仕上がっている。「心配すんないつか死ぬ」「安っぽいゴミは燃やしちゃいな」と
吐き捨てるように歌う、そこに色気を感じた。
このアルバムのハイライトは「こころ」だろう。生き辛さを常に抱え、ちぢこまっていた
主人公が一人の「君」に会って救われるといった内容で、このアルバムの完結を感じた。
「あのこは今日だって生きたい生きたいと泣いている−」(id)。
これだろう。やはりランクヘッドの歌う切なさや絶望はこんなにも胸に響く。
生きるのに疲れていたり、常に鬱屈した感情を抱えてる人たちに強くおススメする。
きっといくらかは救われる。