地域の子育て支援に関わっていますので,「孫育て」に惹かれて読みました。読者は,子育てを経験しそれなりの育児観を持った祖父母と思われますが,敢えて孫育ての教科書や手引書が求められることにも興味を持ちました。内容紹介にあるように,現代の子育て状況は一昔前と大きく変わって,おんぶやおしめといった具体的方法の違いにとまどうだけでなく,家族関係の変化にも戸惑いを高めています。一方では,子育ての主役は父母であり,祖父母は脇役であることは否めないところ。その脇の固め方が,昔とは異なってるということでしょう。
表題の「教科書」が少し気になりましたが,「じいじ,ばあば」といった率直な言い回しから,孫との暖かいやり取りが感じられました。
前半は,孫ができることで生じる人々の役割の変化,関係の変化,家族の距離などを具体的に示され,ちょっとした育児テクや日常の小わざが,主役たるパパママへの気遣いと共に示されています。
著者の本領発揮は,第6章からで,これが教科書の由縁なのかも。奥付の経歴を見ると,臨床心理士としてさまざまな医療臨床を経験され,小中学校のカウンセラーや大学の学生相談まで幅広く現場を体験されています。臨床は,専門家といえども,命がけの現場です。筆者は淡々と語られますが,現場の経験と知恵に支えられた語りを感じました。理屈を説いたり自説を押し付けるのではなく,孫育てに役立つこと,若い父母の励みになることを,穏やかな口調で語られています。最後に若夫婦と老夫婦との距離の取り方を具体的に記されていますが,ここでも現代子育て状況を踏まえた細やかな配慮が感じれらました。孫育てに関係する多くの書が孫に嫌われないための接し方を述べているのとは一線を画した書と思います。ちょっとした心理学的俗説の引用もありますが,理屈とのバランスが適切で,著者の誠実で堅実な人柄を感じさせる世代間育児論でした。