ソフトバンクの首脳陣たちに長時間インタビューをしたノンフィクションです。しかし、内容はフェアな記述に徹しています。
ヤフーBBでのブロードバンド参入とボーダフォン買収で通信会社になったソフトバンクは数々の危機に直面する。これを首脳たちの生の発言によって再現しています。どうやって聞き出したのか分かりませんが、その発言や繰り広げられるドラマが非常に生々しいのが印象的です。専務の宮川氏が孫さんと真っ向から対決して営業方針を180度変更させたり、代理店改革を断行する宮内副社長が、傘下の代理店から怒鳴られるシーンなど、まるで映画を見るような緊迫感があります。著者はソフトバンクを「モノ売り企業」と定義しています。それも体力勝負の営業だけではなく、「緻密なマーケティング」の結果、携帯戦争に勝ち抜いたと見ます。MBAやフィリップ・コトラーなどのマーケティングの教科書を読むより、この本をじっくりと読んで研究するほうが、マーケティングの現場を知るには最適の教科書になるでしょう。
本書の真骨頂はアップルの強さの理由と、多くの日本人が信じて疑わなかった「技術立国」という神話が、音を立てて崩壊していることに言及する部分です。詳細は読んでいただきたいですが、ここ数年、私自身の中でモヤモヤしていたものがスッキリしました。そして、著者の論理的な「日本が駄目になった理由」を読んだ後、不思議なことですが、「まだ日本は戦える」と思いました。本書のように冷静に敗北の理由を分析した時、次に進むべき道が見えてきます。
読み物としても面白く、分析も優れているのでオススメできます。