孫文の暗殺を狙う清王朝からの暗殺者たちと、孫文を守ろうとする香港の運動家たちの攻防を描いた作品。攻防と言っても孫文を暗殺者から守るのは、彼が香港に立ち寄り、仲間と会談するわずか1時間だけなのだが、この設定が巧い。前半では登場人物一人ひとりのドラマを描き、命を賭けて孫文を守ろうとする彼らに観客がしっかりと感情移入できるように作られ、後半は一気のアクションで魅せる。
この戦いの中心にいるのは香港の有力者である商人のリー・ユータン(ワン・シュエチー)。これまで意識したことのない俳優だが、シブい演技で全編を締めている。既視感が全くないために、すんなりと彼の存在を受け入れることができた。別れた妻(ファン・ビンビン)の頼みでリーを守る落ちぶれた警察官を演じるのがドニー・イェン。「イップマン」とは対照的な役柄だが、後半は彼ならではのスピード感のあふれるアクションをたっぷりと披露している。ニコラス・ツェーもみすぼらしい身なりで、リーの車夫を演じたが、イケ面ぶらずに泥臭く演じきったところが逆にカッコよかった。他にも武術の使い手レオン・ライ、孫文の友人レオン・カーフェイ、香港警察の警部エリック・ツァン、清を追われた元将軍サイモン・ヤムなど、そうそうたる顔ぶれが、それぞれにしびれる名場面を作っている。さらにファン・ビンビンは相変わらず美しく、映画初出演という中国のポップス歌手クリス・リーやNBA選手だったメンケ・バータルのアクションも合格。そして何より、これだけの人数の豪華キャストを生かし切るテディ・チャン監督の手腕はさすが。
「辛亥革命」についてはあえて深く掘り下げることをせず、いわば「気分」だけで突っ走ったといえないこともないが、個人的には今年鑑賞した中では最も面白かった作品かもしれない。いろいろな意味で、非常によくできた作品である。