孫文という複雑な人物の入門書としては良いのではないかと。いささか、贔屓の引き倒し的な所がありますが。
また、孫文本人より、孫文周辺の人物に多くが割かれていて、全体を見るには良くても孫文個人を良く知るためには不足な感じはありますが、この辺りは類書を読んで把握すべきでしょう。
なお、孫文が「黒社会」の一員だった件については、この本ではやや説明不足です。広大な中国では旅の安全などのためから、古くから互助会の様な秘密結社の様な組織がいくつも発展してきました。これらを「幇」と云うのですが、この「幇」の別名が「黒社会」です。一部、本当に暴力団化した「黒社会」も有りますが、犯罪性の無い「幇」もまた多数あるとか。ただ、基本的に秘密結社的性格を持つため、実態には謎の部分もあります。で、華人は複数の「幇」に同時に加入している事が多く、世界の「幇」の社員のべ総数は世界の華人のべ総数を超えているそうです。まあ、日本も「宗教の信者のべ総数」が人口を上回っていますから、そうおかしな事でもないと云えましょう。