私は漱石ファンではありません。実は鴎外の方が好きです。
ただ「デキゴトロジー」の頃からの夏目房之介ファンです。
房之介氏が漱石の孫として、その作品をどう読むのかに興味があって読みました。
祖父漱石とは全く会っていないのだから、孫と言えど作品がわかるわけないだろう、という考えは正論だと思います。
しかし、「血のつながり」というのは怖いものです。
年齢を経るとともに、どこかで似ている部分が出てきます。
若いうちは親や祖父母の嫌なところに反発したりするのですが、気がつくと、
そんなところがそっくりの人間になっていたりすることが多々あります。
「たまんないなぁ。」という不満と「ああ、やっぱりだ。」という諦めを感じます。
この本で房之介氏が推測している漱石は「あっ、やはり孫だなぁ。」というものでした。
恐らく研究者や評論家では出て来ない感想でしょう。
実際に祖母や親、叔父伯叔母たちから聞いているためもあるでしょうが、
祖父漱石の中に自分と同じ部分を見出している孫房之介氏の気持ちは、私には非常に納得いくものでした。
「坊っちゃん」「吾輩は猫である」で苦笑し、「こころ」ではあの長い手紙と終わり方についての感想に頷きました。
熱狂的な漱石ファンには嫌がられるような内容かもしれませんが(房之介氏も何度も嫌な思いをされているようで)、
私にとっては少しだけ漱石を身近にしてくれた本でした。