大阪医科大学のLDセンターといえば視知覚について言えばおそらく日本でも最先端の取り組みをしている機関といってよいだろう。
LDセンターでの取り組みは、これまで雑誌論文や学習ソフトやドリルという形では世に出ていたが、書籍として出るのは初めてであろう。
視知覚分野に関心のある人々にとっては必読の書と言えよう。
まず第1章「視機能と視覚情報処理の役割とその理解」では見る力についての基本的な働きを理解し、第2章「学習の土台となる知覚・認知機能」では見る力に限らず、学習のつまずきの原因となる認知的な困難さについて理解し、第3章「つまずきの背景にある「見る力」の問題」ではどのような見る力の弱さからさまざまな苦手さが出てくるかを理解し、これらの3章によって段階的に見る力についての全般的な理解を深められるようになっている。
視知覚や認知について余り詳しくない人が読んでも理解できるように図解も多く交えながら平易に解説されており、視知覚についての良き入門書となっている。また類書が少ないこともあるが、認知や学習について知見を持つ人が視知覚という分野についての理解を深めるためにも有益である。
第4章「アセスメント」、第5章「環境調整と視覚発達支援」、第6章「見る力が弱い児童への学習指導」の3章は実際の指導・支援に関わる内容である。アセスメントは専門的すぎない、簡便に実施できるものが紹介されており、子ども達の見る力のおおよその把握に有効であろう。困難さのある子どもへの指導では能力やスキル自体を伸ばす指導と、困難さを補う環境調整の内的外的双方の方策が必要であるが、視知覚についても同様のことが言える
。第5章・第6章ではそれらの方策の大まかなポイントが示されている。そして第7章「事例紹介」では実際の事例のいくつかが紹介されており、どのような困難さに対してどのような指導法を用いるか、どのような指導法でどのような効果が上がったか参考になるものである。
類書の多くが実際のトレーニング法を中心として記述されている中で、本書は理論的な部分が強調されていることが特徴にあげられる。
具体的な手法も勿論重要であるが、バックボーンとなる理論を把握しておかなければ、「はやり」で終わってしまう可能性もある。
原因が変われば有効な手法も変わる。技法の有効性を保証するのは現状の把握、把握のための理論である。
学習面にとどまらず、様々な面での改善が認められる視知覚トレーニングを深めるために待ちに待った書であると言えよう。