高田里惠子は現在数少ない信用できる書き手の一人だ。本書も高田の戦略的なプロットと細部の巧みが噛み合った好著である。「不幸の均霑」という書中で登場する歴史家加藤陽子の言葉が印象深い。これは、戦後を貫き、今日にも通用する言葉かもしれない。怖ろしく哀しいそしてリアルな言葉。この一語を巡っての高田の論の展開が見事な力技だ。それを簡単に説明することは極めて難しい。レビューでチョコチョコと書いていたら著者に申し訳ないというようなものだ。本書は各紙誌の書評が楽しみだ。そういう本はいまや珍しい。評者の予想では碌な書評が出ないだろう。逆に言うと枚数も少ない書評ごときに簡単にまとめられるような本は大したものではないともいえるが。
まあ、そのほかにもいろいろと興味深い論点が多く、決して読みにくくはないのにおなかがいっぱいになる。数多くの資料や書物を博捜し、纏め上げる著者の手腕は大したもの。
8月15日へ向けて必読の1冊。むしろ、12月8日に読むべきか!