おなじく山の人を描いた「岳」の最新刊を読んだ後、この「孤高の人」15巻を読んだ。
「岳」はあれだけ多くの無惨な人の最期を描きつつも常にその人間の生き様の底に希望や善根のようなものを描き続けている。それとは対照的に「孤高の人」は恩師の死、友人の裏切りなど、救われない罪の意識や人間への不信など暗く淀んだ人間観が作品の底に流れている。それが主人公を「孤高」へと向かわせる原動力であるということかも知れない。
どちらが、好きかは別にして、どちらも「人間」をしっかりと描こういう著者の決意と姿勢には好感が持てる。
この「孤高の人」15巻もそうした人間洞察と描写にあふれており星五つでもおかしくない。
ただ、作品の流れ全体を俯瞰して見ると作品の佳境にはいり、収拾のついていない問題にやや強引な決着をつけているような一面がない訳ではない。
作品の最初期に登場した切り、登場しなかった原のこのような姿での登場もその一つだ。
このように描くなら、もう少し作品中盤で原の動向、生き様を描いておいた方がこの姿に重みが出たと思うのだ。
「孤高の人」には他にも二宮祐介やその親類前園蒼など意味ありげに登場させながら、その後の動向を深く描いていない登場人物が幾人かいる。
そういうことを考えると全体の構想でややあらがあるようにも思えてしまう。
それを完結に向けてどう収拾するのかが課題となるだろう。
以上の理由で星四つの評価としてしまうが、作品自体好きな作品の一つであるし、著者の優れた力量は大いに評価する。
次の巻も楽しみにしている。