元号が昭和から平成に変わった1989年。大学病院から「腰かけ」に来ている、腐った医師たちのせいで、慣例主義という名の機能不全に陥っている海辺の市民病院に、米国帰りの外科医・当麻鉄彦(堤真一)が赴任する。彼は「目の前の患者を救いたい」という信念のもと、次々とオペを成功させ、病院と人々を動かしていく…。
現職医師・大鐘稔彦による、医療制度の深部を鋭く突いたベストセラー小説を、『クライマーズ・ハイ』(脚本)『フライ,ダディ,フライ』の成島出監督が重厚かつ繊細に映画化。医師不足、手術ミス、地域医療、臓器移植といった現代医療が抱える、さまざまな問題を浮き彫りにしながら、患者の命を救うことだけを願う医師の信念と、その一途な思いが周りを変えていく筋道をていねいに描いた、大人のための本格的な医療ヒューマンドラマを作り上げた。
手術シーンでは田宮二郎をほうふつとさせ、その存在感のある演技で、映画を引っ張る主演の堤真一をはじめ、柄本明や吉沢悠、中越典子、松重豊、平田満、生瀬勝久といった個性的な面々がそれぞれの役柄を力演。なかでも、夏川結衣と余貴美子、2人の実力派女優の力演には喝采を贈りたい。20 年後の現在を舞台に、医師・当麻を支えた看護師・浪子(夏川結衣)が遺した日記を、新米医師である息子(成宮寛貴)が読み進める形で回想され、親から子へ信頼と命をつなぐ愛情のドラマも、しっかりと綴られている。
実際に生体肝移植を執刀している医療チームの監修で、忠実に再現された、クライマックスの手術シーンも見どころ。地味だが誠実。非常に好感の持てる秀作だ。