英語の原題は『Lonliness: Human Nature and the Need for Social Connection』、つまり社会的につながることの重要性が本質的なテーマになっている。孤独というのはそのつながりが欠損している状態であるが、それによって引き起こされる問題は非常に多面的であり、本書の議論も多岐にわたっている。前半は社会的なつながりにまつわる生理学と脳科学の解説、中盤は人間にとっての社会的なつながりに関する生態学的・進化論的な考察、後半は健全な社会的なつながりを取り戻すための社会学的・心理学的な処方箋を論じており、幅広く知的好奇心を満たしてくれる。
現代社会に見られる孤独という問題は、技術的にも文化的にも個人の自立を促してきた文明の副作用であり、一見すると極めて社会学的な現象のように思える。しかし孤独感とは、実際には進化を通じて必然的に実装されてきた生理機能でもあり、それはヒトという種に固有の繁殖形態と生存環境に起因するという。事実、「自分は孤独である」という主観的感覚は、生理的基盤を通じて身体と認知機能に悪影響を及ぼし、結果として個人にも社会にも深刻な問題を引き起こす。
話題のネタになりそうな面白い話も豊富だ。例えば、身体的な接触という皮膚への刺激によって、孤独感を抑えるホルモンが分泌されるらしいが、それは消化器官という内面の皮膚への接触、つまり食事によっても同じ効果が得られるという。だから孤独な人は人恋しさからの過食で太りやすい、という嘘のような本当らしい話とか。
個人と社会の両面から孤独への対処法を説く終盤部分は、宗教や伝統の効用と起源に迫るようでもある。ただし、そこで語られているのは欧米社会の問題であるため、日本人の読者が自国や自分自身の問題に対してこの本から指針を得たいのであれば、当然、独自の仮説を構築する必要があるだろう。
あとは、孤独の裏返しである「拒絶の科学」もあるのなら読んでみたい。