俳句を少しでもかじっている人で正岡子規の名前を知らない人は、まずいないだろう。
子規の句碑は、日本中至る所にある。
たとえば故郷松山駅前には
春や昔十五万石の城下哉
の句碑があるし、東京の石神井川沿いには
若鮎の二手になりて上りけり
の句碑がある。だが子規はわずか34歳で亡くなっている。この短い生涯で2万4000句もの俳句の他、
多くの短歌、随筆を遺している。
本書はその俳句の中から1日1句、合計365句を、短い感想と共に並べている。
この選句がいい。名句だけでなく、あまり取り上げられない句、異色と言われる句など、
まさに子規の「大きさ」を見る思いだ。日記のように1日一句ずつ読んでいってもいいし、
たとえば8月20日なら、その日の句を見ればいい。
蕪村が好きだったと言われる子規俳句の自由さ、自在さ、先鋭さ……わずか365句だが十分に堪能できる。
また短いが著者の感想と句評も、子規俳句同様、軽やかで自在だ。
何げなく手に取った一冊だが、まさに優れものの1冊だった。
なお著者は「俳句甲子園」の運営などでも活躍している、子規と同じ松山在住の俳人である。
それにしても、子規が長生きしていたらホトトギス派主流の日本の俳句界も
全く異なったものになったろうと痛感させられる。