「優しくて家事もしつけもしっかりした母親」という社会のプレッシャーや
子育てに理解の乏しい職場など、現代の母親を悩ませる問題はいくらでもある。
機械化により家事労働は減ったと思われがちだが、子どもが家事を邪魔したり
仕事があったりと考えると、劇的に減ったとは思いにくい。
児童虐待に対する理解が進んだ分、「私は子どもを虐待してるのかしら」と
悩むことも多いだろう。この本は、そんな母親の悩みを理解するカウンセラー・
理解して欲しいと周囲に訴える啓蒙書・「自分は虐待してるのかも」と
悩む母親にとっての頼もしいアドヴァイザーと言えるだろう。その意味ではとても良い本。
だが、問題としたい点もある。
P.66で「児童虐待は増える一方」とするグラフはあくまで児童虐待の「相談件数」であり、
また児童虐待に対する関心が高まったこと、平成16年(2004年)に
児童虐待の防止などに関する法律が改正されて、通告対象が広がった上に
警察の協力を得やすくなったことが要因で統計に上る件数が増えた側面もある。
児童虐待そのものが鰻登りに増えたとは言い切れないのだ。
もちろん本当に増えている可能性もあるが。そこが不明瞭なのは残念だ。
もう一つ。子育てに悩む母親にはこうして応える本が増え、
法律や行政のサポートも次第に始まっているが、
子育てに悩む父親は今なお放ったらかしにされている。悩みに応える本は皆無で
法律や行政のサポートに至ってはゼロに近い。
「母親」「父親」を「母子家庭」「父子家庭」に置き換えても同じだ。
この点にも実は「子どもを育てるのは女性の役目」という意識が潜んではいないか。
それをはっきりさせなければ、この本も絵に描いた餅に終わりかねない。
「母親の」と銘打った本に無茶な注文かも知れないが、この観点は重要だと思う。