ほとんどの日本人は、これまで
「アメリカに比べると、日本は高い税金が弱者にまわっているから子どもや弱者にやさしい社会のはず」
と漠然と思ってきたはずだ。
本書でその認識が間違いであったと示された(表3-3)。
日本の低所得者は米、仏、独、英等に比べて多くの税・社会保障負担を強いられている。
つまり、日本で貧困から抜け出すことは、他の先進国よりも難しい。
豊富なデータで、日本の子どもと子育てが、他の先進諸国に比べて劣悪な環境下でなされていることが立証される。
特筆すべきは政府の「逆機能」。税制や社会保障制度で、子どもの貧困率は改善ではなく悪化している(図3-4)。冷静な著者もここで「!」マークをつけて訴えるほど、驚くべき政治システムである。再配分は政治の根幹にある機能ではなかったのか。
本書で問題の所在は様々な角度から見事に検証されたが、読者はそのぶん疑問も増えるだろう。
本書にあるような目に見えるデータは以前からあったし、政府は知りえる立場であったにも関わらず、なぜ子ども・子育てへの支援は今なおここまで少ないのか?
そして、それを解決する制度をデザインするのは、厚労省?文部省?地方自治体?少子化担当大臣?
疑問は残るが、国民が薄々知っているのは、誰も解決してくれないだろうということ。
ならば私たちの税金は何に使われているのか?
子どもの教育よりも優先順位の高い公共事業がどれだけ日本にあるのだろうか?
それを誰が教えてくれるのか?
子どもには選挙権がない。子育てに奔走しているシングルマザーも選挙に行く暇はないだろう。つまり子どもとシングルマザーの貧困家庭は政治勢力たりえていないから、問題は棚上げされているのか?
明治以降日本が先進国の仲間入りをしたのはひとえに国民全体の教育水準の高さと勤勉さによる。
その蓄積を足蹴にする小さな不作為の堆積が、最終的に誰を犠牲にして何を失っているのか、政府も有権者も再考しなければいけない。