児童虐待が子どもに及ぼす心理的身体的な影響を、トラウマという観点からみる本。
少し前(1997年)の著作だが、記載されている知見に古さはいささかも感じられない。
私たちが児童虐待の事例に遭遇したとき、最初に取り組むことは、可能な限り迅速に、その子どもを悲惨な状況から救い出すことだ。そして、家庭や両親に替わり、落ち着いた生活を送れる環境を提供することである。
しかし、現状は、児童の保護だけで手一杯で、アフタケアまではとても手が回らない。
人も金も意識も全てが足りないのだ。子どものトラウマに着目したきめ細かい療育ができる環境整備が望まれる。
取り敢えず施設に収容し、生命の危機は脱したものの、アタタケアができないため、心の中にトラウマを抱えたまま成長していく子ども達の何と多いことか。対人関係に障害を抱えたまま社会に出て苦労し、挫折して自殺や犯罪への道に走ったり、不幸な家庭を再生産してしまったりする例は後を絶たない。
著者はトラウマを「瞬間冷凍された体験」であるという。冷凍された体験は解凍して適切に処理されなければ、前へは進めない。「瞬間冷凍された体験」を処理、トラウマを消化吸収していくプロセスは3つのRであらわせるという。
Reexperience(再体験)
Release(解放)
Reintegration(再統合)
だ。最終章である第五章で作者はその方法についても簡単に触れている。