ネット接続が出来る携帯が発売され10年。その間に、子供を巡っての環境は大きく変わった、とする書。
しかし、本書は極めて問題の大きな書であると判断する。
まず、著者の過去の書と同様、客観的なデータ、論拠が全くない、という点。
いくつかの事例をあげ、「こんなことはなかった」などと言うが、実際にそうなのかは不明である。そもそも、統計などから明らかに間違いである部分も散見される。
そもそも、ネット以前にも、悪質ないじめによる自殺事件や、ダイヤルQ2やテレクラなどを使った児童売春事件などは存在している。そこを忘れ、携帯以前・以後を分断すると、判断を誤るだろう。
次に、著者が90年代以降の若者文化に対して一貫して否定的な視線を送り続けている点。
論拠がないところに、著者の否定的な評価が加わるため、必要以上にケータイ文化、ネット文化を「悪いもの」であるかのように見えてしまう。
しかし、事実としての現象と、著者の意見というのは、本来、分けて考えねばならないだろう。そうでなければ、実態の把握、冷静な判断というのは出来ない。
著者の出す解決案とは、大人が携帯、ネットを知り、子供に使わせないようにしよう、というもの。
しかし、ここまで書いたように、本書は、論拠が無く、極めて扇動的な上に、否定的な偏見による解説があるため、「大人が携帯、ネットを知る」道具とはなり得ない。
本書は単に、若者文化に否定的な偏見を持った著者が、携帯に対する危機意識を先走らせて書いただけの書である、という風にしか言えないと思う。
そして、それを元に、ただ携帯やネットをさせるな、ということをして、本当に子供が救えるのか、私は大いに疑問である。