終戦直後、GHQの靖国神社焼却処分案に反対し、それを阻止した人にローマ法王使節代理ブルーノ・ビッテル神父という方がいた。彼はマッカーサーに尋ねられて、次のような回答をした。
「靖国神社が国家神道の中枢で、誤った国家主義の根元であるというなら、排すべきは国家神道という制度であり、靖国神社ではない」
GHQは教育勅語を国家神道の聖典と断定していたから、結局のところ、彼らの見解は靖国神社を残し、教育勅語は捨てろ、ということになった。そのとおり我が国は国会で教育勅語の排除・失効確認を決議した。そして靖国神社は一宗教法人として今日に至っている。ビッテル神父からすると靖国神社と教育勅語は両立しない。
渡部昇一・中條高徳両氏は我が国を代表する知識人である。そのお二人が本書では何の説明もなく靖国神社と教育勅語をともに擁護されている。矛盾としか言いようがない。ビッテル神父は上智大学の関係者でもあったが、渡部昇一上智大学名誉教授はここをなぜ説明されないのだろうか。
教育勅語を日本人が誤って解釈し、GHQがそれを鵜呑みにして「神道指令」を発したことはすでに解明されている。この「誤解」を正し、その学術的真実を子孫に伝えることこそ、知識人の最重要事項のひとつではないだろうか。それで初めて靖国神社と教育勅語をともに擁護することが可能となる。
『元田永孚文書』『井上毅伝』からの説明なら誰でも確認できる。次回に期待したい。