「嫌われ松子の一生」は、中島哲也の才気溢れる斬新な構成の中、飛び切り面白くて、切なくて、いとおしくなる傑作だが、作品の評価は別に譲るとして、ここでは、日本映画としては極めて稀なミュージカルとしての魅力を司った楽曲の素晴らしさについて、声を大にして賞賛しておきたい。今作に参加したミュージシャンは、BONNIE PINK、AI、木村カエラ、及川リンら既に独自の世界を構築させているアーティストたちばかり。ポップス、R&B、ロック、ヒップホップ、ムード歌謡、童謡にファニー・ミュージック等、皆それぞれに喜怒哀楽極まる主人公松子の心象風景を謳いあげていて見事だが、やはり、最も印象的なのは3で、ポップでノリの良いメロディに、いつもながらにセンスの良さとそのものずばりで刹那的で可笑しい歌詞のBONNIEの曲は、中谷美紀のストレッチと共に、いつまでも脳裏に焼きついて離れない(笑)。その他、「シカゴ」、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」、「ディズニー映画」らを意識しての作品は映画ファンとしては楽しいし、「あなたの心に」(良い歌だなぁ!)や「古い日記」と言った懐かしい名曲が聴けるのも嬉しい。そして特筆すべきは中谷美紀であって、才能ある女優であると同時にかって歌手としてヒット曲も持っていたと言う事実を思い出させるその歌の素晴らしさは、残念ながらアルバム未収録ながら、彼女が劇中歌う「水色の恋」や「恋人よ」を是非ともフルコーラスで聴いてみたかったと思わせる。さて、そのあまりに苛酷で哀切な一生に心動かされつつ、彼女が転生し、安住の地に赴くラストで流れる17,18を聴きながら、今宵も松子に思いを馳せてみようか。