松子の不幸はますます容赦がなくなってきます。
私はこの小説は「負のおとぎ話」だと思っています。シンデレラストーリーに幸福のゴールがあるように、この物語にもちゃんと不幸のゴールがあります。こうなるより他ないんです。これはそういう物語なのです。しかし、それは決して映画「ダンサーインザダーク」や「フランダースの犬」のような、外的環境に翻弄される「弱いものいじめ」ではなく、すべては松子自身の責任において堕ちていくところが熱いのです。
ミステリー小説などでは、しばしば賢明な若い女性の登場人物が、一条の光を投げかける存在として描かれますが、ここでは、松子の甥の笙の彼女である明日香という女の子がその役割をしているように思います。
おそらく松子とは正反対の明るい人生を送るであろう明日香に、本来真面目で努力家な一面をもっている松子が歩めなかった人生を重ねてしまいました。
「嫌われ松子」は一生を終えることで、「愛され松子」になったのでしょうか。
松子が実家に帰ったとき、子供だった甥っ子の笙に出会う場面と(笙はそれを覚えていない)、松子の最期の場面は、少しせつないです。
賢く生きるって実は簡単なことで、体と情で生きることのほうがずっとずっと大変なのかもしれませんね。
それにしても、この文庫、解説がよくないです。こんな視点で解釈してしまったら、読後のテンションがぐ〜んと下がってしまいますよ。