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睡眠薬自殺を図ろうとした妻を置き去りにして、子供のころ訪れていた湖畔の別荘地に逃げる男、街の全てが石膏色に見えてしまう男、高級料理店に場違いで入ってしまった学生の話などなど。半分幻想的で、半分はざらっとした現実を硬質な文章で書き上げていきます。
吉行氏の素晴らしさは、対象に感情移入することを極力避け、一歩離れて無機質な文体で、人間心理を深くえぐるところだと思いますが、この作品集でも、それは如何なく発揮されています。読後に考えさせられてしまう本。
主人公の男から見たある娼婦の物語で、お互いに好きとか嫌いとかいうのは出てきません。しかし、ただ男と女の微妙な恋愛とも違いますし、心に欠落がある男と女の慰めあいとも違います。
どういう二人なのかという説明がうまくできないのですが、ここにはとても大きななにかがあって、心を離れません。
簡単に言ってしまえば、女の性(さが)みたいなものでしょうけれど、何度読んでも心に引っかかるし、何かどうしようもない強い気持ちが湧き上がってくるのです。
短い作品ですが、一瞬で人生をずばりと切り取られてしまったみたいな作品です。
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