他の方の評価が低いのに驚きました…ある意味、仕方ないのかも知れませんが。
作者はおそらく、大切な人と引き離される可能性が常にあることを、よく分かっているのではないでしょうか。
漫画だから「リアリティがない」のでしょうか? こういう事態は現実に、誰にでも起こり得るのです。
さっきまで一緒だった恋人が、家族が、どこにいるのかも、無事なのかさえもわからない。そういうことは。
突然この世から去った人を何人も見送った私には、日常も非日常も描いたこの作品は、共感できるものでした。
主人公とパートナーは年齢差はあるけれど、彼が先に死ぬとは限りません。日常とは儚く脆いものなのです。
彼の魅力は言葉の端々に顕れる「無常感」で、それは今日生きているから明日もそうとは限らないと知ってるから、では。
私も主人公と同年代で、よく人に「なぜ結婚しないのか」と尋ねられます。
強いて言えば、災害時に真っ先に頭に浮かぶのが、家族だからです。
今のところ、それ以上に大事なパートナーに出会っていないからです。
主人公の「女」故の、苦悩とまではいかないまでも心をざらつかせる、世間とのかすかな摩擦。
仕事でどんなに頑張っても、最初から「所詮女は」とされてしまう理不尽さ。
結婚という自分にとっては重大事を、他人にあれこれ詮索されることに対する疲れ。
「あなたたちが私の面倒を一生見てくれる訳ではないでしょうに…」主人公の心中の呟きは、私も何度も思った言葉でした。
「家を持つような女は結局“男”」という評価や、「よく見たらボロボロの馬車」に象徴される過去の恋愛も。
その意味でもリアルな作品でした。
そういえば作者は単行本『水が氷になるとき』の『君去りてのち』にも、同様のテーマを描いてますね。
「相手を過去ごと受け止められるか」と、「大切なものに気付いたときには既に遅い」という…。
今回はハッピーエンドだった所を見ると、作者自身に変化があったのでしょうか。無常感は持ち続けつつも。
昔の、荒涼とした寂寞感ある印象が薄れて、優しい作品が増えたように思います。