中でも圧倒的な印象を残すのが、独特のバランスで保たれた2人の奇妙な同居生活を描いた表題作「姫君」。「世界のための」源氏名を持つ破天荒な姫子と、ミュージシャンを目指している人のよい摩周。2人の同居生活は、お互いに一線を越えないようにしようという暗黙の了解によって成り立っていた。おもしろいのはここでいう「一線」が、肉体関係のことではなく、もっと観念的な関係性での「一線」であること。だがその関係性も徐々に変化していく。必死に保っていたバランスが崩れ、そこから新しい関係が始まろうとしたときに2人を待ち受けていた思いがけない結末とは…。
そのほか、他者との複雑で微妙な人間関係を淡々と描きあげた「MENU」や、一風変わった語り手が特徴的な「フィエスタ」など、いずれも人間の関係性に焦点を絞った作品がそろっている。密度の濃い関係が、山田詠美独特の一見軽い口調で展開されていくのだが、内容自体は決して軽いものではない。これまで、肉体関係を中心とした即物的な作品を書く作家という印象を持っていた人は、そのイメージが一変するのではないだろうか。それほど、人と人との関係性が非常に観念的に捉えられており、人を愛することによって生じる、失うことへの恐怖のさまざまな変奏が、せつなく熱く胸に迫ってくる。
漫画家の真鍋昌平によるカバーイラストも、その都会的な雰囲気が内容にぴったりマッチしていて、ひとつの作品としての完成度をさらに高めている。(盛岡真美子) --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。
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8 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
足りないもの,
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レビュー対象商品: 姫君 (単行本)
私は山田詠美さんの作品が好きです。「色彩の息子」「蝶々の纏足」「晩年の子供」など、好きな作品はたくさんあります。 「文学界」の新人賞の選考委員もされていて、その批評が非常に的を射ていて面白いです (最近出版されたエッセイ集に入ってますね)。 ですが、「姫君」は少し何か足りないような感じがしました。 面白かったのは、確かです。 でも、期待し過ぎていた分の失望感かも知れません。 少女マンガについて悪いものの例えとして使っているわけではありません。 期待していたことが外れてしまった分、星ひとつ減らしました。 .
6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
胸に刺さるもの,
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レビュー対象商品: 姫君 (文春文庫) (文庫)
この本のタイトルにもなっている「姫君」は、とても胸が痛い。ホームレスだった姫子と、その姫子を拾った摩周との目線で描かれたこの作品は、山田詠美さんの作品の中でも忘れられないものになっている。「姫君」を読んで、私はなぜか後悔にも似た感情がわいてきた。「読まなかったら良かった」的なものではなく、まるで自分が姫子や摩周であったかのように、「あの時こうしてればよかった」そんな後悔だった。 テーマは「愛と死」 それはこんなに身近にあったものなんだと感じる作品。
6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
混沌というか、複雑というか。。。,
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レビュー対象商品: 姫君 (単行本)
山田詠美と言う人は、天才だ。というか、どうしてこんな複雑で混沌とした感性を 言葉で表現できるのかがわからない。 だけど、その言葉は心のひだの一つ一つ間で入り込み、 眠っていたはずの感性と記憶を刺激する。 わかりやすい恋愛なんてひとつもないんだよ。 日常では呼び覚まされなかったものがよみがえってきて
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