結婚をいう希望を捨てプチ老後を楽しむべく故郷に戻ったアラフォー司書・ヨリ。彼女に突如訪れたロマンスを描いた西炯子の続きもの
コミック・第2巻。前巻は物語の序奏というべく、故郷に帰ると同時にヨリの奥底へ押し込めていた恋愛願望が、元クラスメイト・誠により
こじ開けられ困惑する様子が描かれていたが、本巻は彼女自身がとある落とし前をつけるだけでなく、彼女を取り巻く外的環境も大きく
変化していく。特に本巻で描かれるヨリと誠の関係は、恐らく多くの読者が前巻時点で予想もつかなかった斜め上の展開を見せている。
誠のことで無意識に思考が侵食され、心を乱すことに疲れた彼女が誠に提案するのは「ルールを守った楽しい不倫」。金払いを前提に
割り切った肉体関係を持つことである。自らそのビジネスライクな関係を望みながらふとした誠の無垢な表情に心が動揺したり、理に情
が勝らぬ様、性行為に固執することで必死に「大人の顔」を保とうとするヨリ。一方彼女の微妙な心理を見抜き常に先手に回る誠。二人
の心理的な駆け引きが急くことなくじっくりと描かれる。
本巻で最も印象に残るのは、ヨリと誠が「不倫」の一環として決行する温泉旅行のシーン。ヨリが自らの足に落とした刺身を誠に口で拾
わせ食べさせるシーンは、耽美小説の一シーンを思わせる官能と歪みを感じ、ぞくっとさせられる。旅館へ来るまで必死に平静を装って
きた彼女の表情が崩れるあるシーンは、所詮感情を支配された限り、頭で何を画策しても彼女の無駄なあがきであることを残酷にも示し
ている。一方、帰りの車中誠に「体代」として請求した10万をどうするか悩む挙句とった結論は実にリアルだ。
女性から男性への肉欲を明確に肯定したり、性行為中でも当事者達が何処か冷めているドライな描写は、10代少女の為の単なる甘い
ファンタジー恋愛作品群は明らかに一線を画しており、逆に若い世代の方が二人の恋愛模様を読んで何を思うのか興味深い。
未来の無い恋愛に振りまわれたくないという強迫観念から歪んだ関係を望むヨリと、不倫という不実な行動をとりながら自分は「誠実」だ
と平然と主張する誠、二人ともなかなかの癖ありで読者が完全に感情移入するのは難しい人物像ではないか。
一つの作品に完全に読者の見方が一致することなど有り得ないが、特に本作は読み手の立場・年齢によって様々な心象を産むと思う。
読後は何処かにもやもやを抱えながらも尚これからの展開を知りたいと思わせてしまう、なんとも小憎い魅力をもった作品だ。