まず表紙にぐっと惹きつけられた。
海辺の田舎町。湾を見下ろす高台へ続く階段を長いこと登り続けてまだ途中。ふと後ろを振り返る39歳の女性の顔には悲壮感はなく、うっすら微笑んでいる。誰かに笑いかけているのだろうか、と考えるとこの1枚だけでドラマチックな妄想をしてしまう。
物語は、東京で何やら事件があり、悟りを開いたかのようなアラフォー女性が、生まれ育った田舎町に帰り、プチ老後と称して静かに生活していたら、彼女を長年慕い続けていた幼馴染の嵐のような求愛に翻弄されるというもの。よくある設定かと思えばこの男性、中学時代には太めでモジャ毛で暗いタイプだったのが、一転して細身のイケメンで大学講師も勤める精神科医に変貌を遂げていた。しかも主人公にそっくりな妻付きで。初恋の人が忘れられずにそっくりな女性と結婚したようで、夫婦仲は冷め切っている。しかしこの妻は自分に気がない夫のせいで浮気に走っているようにも見える。果たして、この男は、女としての人生が終りに近づいていると感じている主人公を、ただ振り回すだけではなく、恋の舞台に再び引きずり出す事が出来るのか、愛する人と同じ顔をした妻との関係を、大人としてどう決着をつけるのか見物だ。
それにしてもこの作者、緩急の付け方が絶妙だと思う。飄々とした日常から一転、どこにそんな熱い心が隠されていたの?と思えるようなはっとする描写があり、間合いの取り方といい、センスある台詞といい、見所満載なこの作品、何度も読み直し、早速続きが気になって本誌にも手を出しかねない勢いだ。